※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
「それで、最近、どうも、お母様の様子がおかしいということでしたね?」
「ええ、2,3年くらい前から物忘れがひどくなったなあということは感じていたのですが、ここ最近は、私のことを亡くなった親父のことと間違えたりするようになったんです」
「道夫さんと亡くなったお父様を間違えるというのは、かなり認知症が進んでいるのでしょうか?」
「いや、電話口で咄嗟に口をついて出た言葉なので、私が訂正すると、すぐに私のことだと思い直しているようなので、完全に人の区別がつかなくなっているというわけではないようですね。」
「お父様は昨年お亡くなりになったのですね?」
「ええっと、ちょうど昨年の今頃でしたね。そのころから母親の物忘れもひどくなったのではないかと思います」
「亡くなったお父様は何をしていらっしゃったのですか?」
「銀行に勤めていました。退職後は関連のリース会社の役員などもしていましたが、それも完全に引退して数年後に亡くなってしまいました。」
「お母様の介護認定はどのくらいなのでしょうか?」
「要介護2だと聞いています」
「現在、お母様は一人ぐらしなのですか?」
「そうなんです。私は長男ですし、私の妻も説得して母親に一緒に暮らさないかと言ったこともあったのですが、母親としては一人暮らしが気楽でいいみたいでしたね」
「要介護3ということでしたが、お一人で生活するのに不都合はないのでしょうか?」
「そうですね、本当はもう少し介護を必要とする程度か大きいのかもしれませんが、介護認定の際などに頑張ってしまうようですね。それで、介護認定が低めに出ているということはあるかもしれません」
「道夫さんのご兄弟、ご姉妹はどのような状況でしょうか?」
「はい、私たちの下に弟と妹が一人づついます。」
「それぞれ何をなさっているのですか?」
「職業ですか?ええっと、弟の兼夫はメーカーに勤めているサラリーマンです。妹の光子は専業主婦です」
「失礼ですが、弟さんと妹さんとの関係は良好ですか?」
「はい、それは問題ありません。今日私が相談に伺うことも2人には告げてきましたので」
「それで、今回ご相談にみえられたのは、お母様の介護をどうするかということについてでしょうか?」
「はい、それももちろんそうなんですが、今母親が持っている預金などの財産の管理について少し不安があるのです。このご時世、悪徳業者などに狙われるとも限りませんから。それで、成年後見制度という制度があるのを知り、お聞きしたいと思って伺ったのです」
「なるほど。」
「その後見人や保佐人には誰がなるのでしょうか?」
「はい、親族がなるケースもあれば、弁護士などの第三者がなるというケースもあります。親族間に対立があったり、資産が高額な場合には弁護士などの第三者が後見人になる場合が多いと思います。」
「私と弟や妹としては、第三者の方にお願いしたいと思っているんです」
「ほう、それはなぜなのですか?」
「いくら母親とはいえ、財産を管理するというのは大変ですし、それに私たちとしては、誰が一人が管理したとして、後で私的に使ったのではないかとかお互いに疑心暗鬼になるのが嫌なのです。このことは弟と妹も同意見です」
「なるほど、それで、お母様の財産にはどんなものがあるかについては把握していますか?」
「いえ、具体的にはまだ把握しておりません。一人で住んでいる土地建物は、父親の相続の際にすべて母親名義にしました。父親の預貯金については、法定相続分通りに分けましたので、母親は2000万円くらいを取得したはずです。ただ、母親自身がいくら持っているのかについてはよく分からないですね。」
「ところで、お母様は、かかりつけの病院はありますか?」
「はい、近くの医院に通っているようです。」
「成年後見を申し立てるにしても、医師の診断が必要になるので、そのかかりつけのお医者さんに診断書をもらうことはできるでしょうか?」
「それは可能だと思います。私も診察に付き添ったことがありますので頼んでみましょう」