※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


伊達はじめ君の少年事件〜その4

その後,はじめ君は警察署の留置場から少年鑑別所に移りました。半蔵弁護士ははじめ君に会いに,鑑別所を訪ねました。鑑別所のことを少年院と勘違いしている人もいますが,鑑別所は,少年に対する心理テストなどを行って少年が非行に至った原因や改善策を検討するための施設であり,最終的に処分が決定した後に行く少年院とは異なります。
警察署の接見室と異なり,鑑別所で少年と会う小部屋には,特に間仕切りはありません。机に向かい合って話をすることになります。もちろん,鑑別所の職員の立会いはありません。はじめ君は,鑑別所で決められた上下青色のジャージ姿で入室してきました。心なしか,警察にいた時よりもシャキッとしているように見えます。
半蔵弁護士

「鑑別所での生活はどうですか?」

はじめ君

「少し辛いけれど,だいぶ慣れました」

半蔵弁護士

「どんなところが辛いの?」

はじめ君

「・・・・朝早いところとか,テレビとか見れないところですかね。」

半蔵弁護士とはじめ君は,しばらく鑑別所での生活のことについて話をしました。鑑別所では一人部屋で,部屋にはもちろん鍵がかかって事由に出入りすることはできませんが,部屋の中で読書や物書きなどをしているということです。はじめ君は,数学のドリルや漢字の練習帳などを使って勉強しているということでした。
半蔵弁護士

「今回捕まった件もそうだけど,他にも万引きやってたこととか,どう考えているの?」

はじめ君

「反省しています」

半蔵弁護士

「それだけだと,なかなか気持ちが伝わらないと思うんだけれどね」

はじめ君

「・・・・・・・・・・・」

半蔵弁護士

「どうしたら,反省の気持ちが伝わると思うかな?」

はじめ君

「・・・・・・・・・・・」

半蔵弁護士

「もっと被害者の気持ちことを考えないとね」

半蔵弁護士はそれ以上は言わずに示唆するだけに留めました。
半蔵弁護士

「ところで,先日,高校の先生とも話をしたんだけどね」

はじめ君

「はい」

半蔵弁護士

「まだ正式に決まったというわけではないらしいけれど,やはり,このまま学校に在籍というわけにはなかなか行かないようなんだけれども。」

はじめ君

「お母さんからも聞きました。学校にはこれまでもいろいろ迷惑かけてたし・・・」

半蔵弁護士

「退学ということになったら,どうするつもりなのかな?」

はじめ君

「やっぱり,高校は出ておきたいと思ってるんで,どこか,編入できるところ探したいなと思ってます」

半蔵弁護士

「具体的にはどことか考えてるの?」

はじめ君

「まだよく分からないけれど,青葉高校の夜間とかがいいかなと思ってます」

半蔵弁護士

「夜間か。夜間だとすると,昼間はどうするの?」

はじめ君

「バイトとかしようかなと思ってるんですけど」

半蔵弁護士

「昼間バイトして,夜間に学校通うのってかなり大変だと思うけど,本当にできる」

はじめ君

「バイトとかしようかなと思ってるんですけど」

半蔵弁護士

「昼間バイトして,夜間に学校通うのってかなり大変だと思うけど,本当にできる」

はじめ君

「バイトとかしようかなと思ってるんですけど」

半蔵弁護士

「真面目に通えると信じてもらえるかな?」

はじめ君

「・・・・・・・・・・・」

次に,半蔵弁護士は交友関係のことについて尋ねました。
半蔵弁護士

「今後は片倉君とか,佐竹君とかとの付き合いとは,どうするつもりなのかな?」

はじめ君

「こういうことになったので,もう一緒に遊んだりすることは止めるつもりです。」

半蔵弁護士

「でも,相手はそう思っていないかもしれないよ。」

はじめ君

「また捕まったりするのは嫌なんです。だから,その時ははっきりもう遊ばないと伝えます」

その後,半蔵弁護士とはじめ君は,さらに今後の生活の仕方のことなどについて話しをして,半蔵弁護士は鑑別所を後にしました。
それから,半蔵弁護士は家庭裁判所に出向いて,この件に関する捜査記録を閲覧しました。今回捕まった万引きの件に関しては,概ね,はじめ君から聞いていたところと合致していました。また,補導記録を見ると,はじめ君には,中学終わりころから夜遊びや夜間徘徊,喫煙といった問題行動で30回くらいの補導歴があることも確認できました。
また,半蔵弁護士は家裁に出向いたついでに,担当の広崎調査官に面会を申し込み,意見交換することにしました。
広崎調査官

「どうも,初めまして。今回の伊達はじめ君の件を担当している調査官の広崎です。」

半蔵弁護士

「先日の電話では失礼しました。今日は記録を見に来たものですから,折角の機会ですので,少しお時間を頂戴したいと思いまして。」

広崎調査官

「伊達君の様子は半蔵弁護士さんから見ていかがでしょうか?」

半蔵弁護士

「そうですね・・・」

半蔵弁護士は,自分が考えている印象などを広崎調査官に伝えました。
広崎調査官

「そうですね,仰る通り,被害者に対する気持ちに今一つ思いが至っていないということは私も感じています。突き詰めると,他人に対する思いやりということだとは思うのですが。」

半蔵弁護士

「そうですね・・・母親思いのところはある子なんですが。」

広崎調査官

「うん,お母さんの宗子さんには,先日裁判所まで来てもらい事情を聴きました。お母さんも,伊達君のことを思う気持ちはよく分かるのですが・・・」

その後,半蔵弁護士と広崎調査官は,本件について更に意見を交換しました。
少年審判の日が近づいてくると,半蔵弁護士ははじめ君や宗子さんとの面談を重ねました。そして,保護観察処分が相当とする意見書を書き,資料と共に裁判所に送りました。

伊達はじめ君の少年事件 その1 伊達はじめ君の少年事件 その2 伊達はじめ君の少年事件 その3 伊達はじめ君の少年事件 その5