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成年後見(保佐・補助)の終了に関する QA
成年後見を務めていた件のご本人が亡くなった場合に,後見人として保管していた預金通帳やキャッシュカード,不動産の権利証などは,どのように処理すべきでしょうか?
本人の死亡と同時に成年後見人の地位は消滅し,後見人として保管していた本人の物品について保管権限は失われることになります。 これらの物件をどのように処理するかについては,相続人の有無により異なります。 1 相続人がいる場合 (1) 相続人がいる場合には,相続人に対し,保管していた物品を引き渡します。相続人の調査は,本人存命中に戸籍を取り寄せるなどして行っておくべきでしょう。なお,申立時の裁判所の調査では,必ずしもすべての相続人を調べているというわけではありませんので,注意する必要があります。 (2) 相続人が複数いる場合,だれに引き渡すべきかが問題となります。 遺産分割協議が成立していたり,引渡について相続人全員の合意がある場合には,指定された特定の相続人に対し引き渡します。 そのような相続人全員の合意がされていない場合はどうすべきでしょうか? この場合,預金通帳そのものや権利証といった不可分物(性質上,複数の相続人の持分に応じて,現状を分割することが観念できないということです。1枚の権利証をバラバラにはできませんよね。)については,相続人全員の共有状態となり(民法898条),共有者は各人が単独で保存行為は行うことができるものとされており(民法252条),保存行為には,物品の引渡しを受けて保管する行為を含むものと考えられますので,相続人の一人に対して引き渡せばよいものと考えられます。 多くの場合,預金通帳の引渡しについて悩むことになりますが,預金通帳や印鑑を引き渡したとしても,引渡を受けた相続人が窓口に行ってすべての預金を引き出すことはできませんので,このように考えても差し支えないと思います。権利証についても同様です。 ただ,キャッシュカードをそのまま引き渡した上で,暗証番号も伝えてしまうということをすると,キャッシュカードを使って預金の引き出しがされてしまいその他の相続人とのトラブルに巻き込まれる可能性もありますので,予め,当該金融機関に対し本人が死亡したことを知らせて預金凍結をさせておくか,キャッシュカードを裁断した上で引き渡すことが考えられます(キャッシュカードは,相続物件ではなく,あくまでも後見人として付与された後見人のカードであるものと考えます)。 不可分物ではなく,可分物についてはどのように考えるべきでしょうか?とくに,現金を保管している場合に問題となります。 現金が可分物かどうかについては見方が分かれますが,仮に可分であるとすると,現金を相続人の持分に応じて計算して各相続人に対し引き渡さなければならないということになります。このようなことがありますので,本人の財産について現金として保管しておくことは,管理が難しいうえに,本人死亡後の手間もかかりますので,望ましくないということになります。 相続人間に争いがあったり,相続人が受け取り拒否していてる場合には,当該現金を供託することになります。 (3) 相続人間で争いがある場合 複数の相続人がいる場合の原則的対応としては,上記のようであるとはいえ,相続人間に争いがある場合,特定の相続人に対し物品を引き渡すということは,現実的には難しいことも少なくありません。 相続人間で相続についての争いがある場合には,相続人の一人に遺産分割の審判申立をしてもらい,その保全処分として相続財産管理人を選任してもらうという方法もありますが,これも現実的にはなかなか難しいところもあります。 実務的には,現金のようなものを除き,預金通帳や印鑑などの後見人が管理している物品を相続人の一人に引き渡したとしても,引渡を受けられなかった相続人が不利益を被るというわけではないことなどを説明し,相続人全員の合意を得て,特定の相続人に引き渡すか,どうしても,それに納得できないという相続人がいるという場合には,紛争が落ち着くまで,(元)後見人が物品を保管しておくということもやむを得ないと考えられます。 2 相続人がいない又は存否が不明の場合 この場合には,家庭裁判所に対し,相続財産管理人の申立てを行い,選任された相続財産管理人に対し引き継ぎを行うことになります。 もっとも,管理財産が少額である場合など,相続財産管理人の費用(予納金)を準備できないという場合も考えられ,この場合には,後見監督を行っていた裁判所に対し相談し,指示を仰ぐべきでしょう。
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