※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


島津義郎さんの個人再生 その2

半蔵弁護士

「自宅のマンションの時価はどれくらいでしょうか?」

義郎さん

「うーん,売りに出すことは考えたことがないので,ちょっとよく分かりませんが,買った時よりはだいぶ下がっているとは思うのですが」

篤子

「最近,近所に新しくマンションが建ったりして,駅から少し話されている私どものマンションは相対的に値下がりしているのではないかしら」

半蔵弁護士

「分かりました。それでは,マンションの時価については私の取り合いの不動産業者に査定してもらうことにしましょう。他の資産についてですが,義郎さんの契約名義の生命保険や学資保険などはありますか?」

篤子

「はい,生命保険は一つ入っています。学資保険は子どもが二人いますので,2つ契約しています。」

半蔵弁護士

「それらの保険は,解約すると解約返戻金が戻ってくるタイプでしょうか?」

篤子

「調べてみないと分かりませんが,おそらくそうではないかと思います」

半蔵弁護士

「それでは,今度打ち合わせる時までに,保険会社に問い合わせて,仮に解約した場合に解約返戻金がどれくらいになるのか証明書を出してもらうようにしてください。」

篤子

「保険は解約しなければならないのでしょうか?」

「個人再生手続では保険を解約する必要はありませんよ」と半蔵弁護士は念を押しました。生命保険などの解約返戻金を調べてもらうのは,個人再生手続では,債務者が保有している資産の価額を合計してゆくという作業が不可欠になるので,そのために保険の解約返戻金の調査が必要になるということなのです。
半蔵弁護士

「他の資産についてですが,自動車はお持ちでしょうか?」

義郎さん

「今は妻名義の軽自動車があるだけです。」

篤子

「もともとは夫名義の自動車もあったのですが,維持費がかさむので1年くらい前に処分してしまいました」

半蔵弁護士

「義郎さんの自動車を処分したときの値段はいくらでしたか?」

義郎さん

「中古でしたし,確か20万円くらいだったと思います。住宅ローンの支払いなどに充てたと思います。」

それから,半蔵弁護士は,義郎さんの資産について尋ねてゆきましたが,勤務先会社の財形貯蓄が多少あったほかは,めぼしい資産はなさそうでした。
半蔵弁護士

「次に収入のことをお尋ねしますが,確か,お勤め先からの年収が額面で約560万円ということでしたね?」

義郎さん

「はい。」

半蔵弁護士

「毎月の手取り額としてはどのくらいでしょうか?」

義郎さん

「なんのかんのと引かれて,月の手取りとしては30万円位です。」

半蔵弁護士

「ボーナスはどうでしょうか?」

義郎さん

「ボーナスは,夏と冬でそれぞれ50万円位というのが通例です」

半蔵弁護士

「30万円のうち住宅ローンが8万5000円で,管理費が1万7000円だから,住宅関連費用でだいたい月額10万円くらいですね。」

半蔵弁護士が電卓を叩きます。
半蔵弁護士

「月の水道光熱費はだいたいどのくらいですか?」

篤子

「季節によって多少変動がありますけれど,概ね3万円位かなあと思います。」

半蔵弁護士

「食費はどうでしょうか?」

篤子

「子どもたちが食べ盛りということもあって,どうしても7〜8万円くらいは・・・」

計算によると,住宅関連費用や水道光熱費,食費を引くと,義郎さんの給料のうち10万円くらいが残ることになります。しかし,この中から,さらに保険料や学費,さらに個人再生手続で決められた返済額を捻出しないといけません。少し厳しそうです。
半蔵弁護士

「奥さんはパートに出ているのですよね?」

篤子

「はい 近所のスーパーでレジの仕事をしています」

半蔵弁護士

「どれくらいの手取りですか?」

篤子

「そうですね だいたい月7万円くらいでしょうか。」

篤子さんはパートの仕事を続けていくつもりということですので,篤子さんのパートの分も加えれば何とかやってゆけそうです。
半蔵弁護士は個人再生手続の説明を行い,島津さん夫妻は半蔵弁護士に手続を委任することとしました。半蔵弁護士は,島津さん夫妻に対し,必要な資料や調査事項をお願いしました。そして,その日のうちに,各債権者に対し,半蔵弁護士が受任したことを知らせる債務整理開始通知を発送することとしました。
半蔵弁護士

「債務整理開始通知を出しますので,今後は,住宅ローン以外の債務は支払わなくて構いません。個人再生手続で支払額などが決まったら支払うことになります」

義郎さん

「住宅ローンはこれまで通り支払ってよいのでしょうか?」

半蔵弁護士

「はい 住宅ローンは支払わないと住宅を失ってしまいますから,これまで通り支払ってください。住宅ローン先の銀行に対しては,私から手紙を出して個人再生手続予定だと言っておきます。」

義郎さん

「分かりました 有り難うございました。」

篤子

「有り難うございました。」

それから,島津夫妻が書類の準備を行い,半蔵弁護士も債権者から資料を取り寄せ,業者にマンションの時価査定の依頼をするなど,お互いに準備を進めました。 半蔵弁護士は,債権者から取り寄せた資料を再計算しましたが,取引期間もそれほど長くなく,債務は6社で約400万円ということになりました。 半蔵弁護士は,債権者の顔ぶれなどから小規模個人再生手続を選択し,申立書類を作成して裁判所に提出することとしました。

島津義郎さんの個人再生 その1 島津義郎さんの個人再生 その3 島津義郎さんの個人再生 その4