※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


島津義郎さんの個人再生 その1

東京近郊のマンションに妻と小学生の子ども2人の4人で住んでいる島津義郎さん(42歳)は、ここ最近、月末が近くなってくると胃のあたりが痛くなってきます。 というのも、島津さんが現在住んでいるマンションというのは、5年ほど前にローンで購入したマンションなのですが、住宅ローンの支払いが苦しく、銀行のカードローンやもともと持っていた信販会社のローンなどからもお金を借りて住宅ローンに回すありさまになってしまいました。 島津さんの奥さんの篤子さんもパートに出ていますが、家計のやりくりはきつくなるばかりで、「もうマンションを手放すしかないかもしない」と夫婦で話し合っていました。 島津さん夫妻は、弁護士会のクレジットサラ金相談会で、相談に乗ってくれた半蔵弁護士の下を尋ねました。
 半蔵弁護士は、弁護士会のクレジットサラ金相談で相談を受けた際に、弁護士会から受け取った相談時の相談票に目を落としていましたが、ちょうど、島津さん夫妻が事務所を訪ねてきたようです。
半蔵弁護士

「どうも、島津さんですね。一昨日の弁護士会のクレジットサラ金相談はお疲れ様でした。」

義郎さん

「はい、有り難うございました。あの時は、家に帰って妻と相談してまたご連絡しますということにしていましたが、妻と相談したところ、すぐにもう一度相談に伺おうということになり、今日は妻の篤子も一緒に来ました」

篤子

「島津の家内です。このたびはお世話になり有り難うございます。」

篤子さんは少しやつれている感じです、やはり、借金の問題で追い詰められているのでしょうか。
半蔵弁護士

「早速ですが、債権者一覧表の方は完成してきていただけましたか?」

義郎さん

「はい、家に戻って、ローンの請求書などを整理して完成させてきました。」

 弁護士会での相談の際にも、島津さんには弁護士会備付の債権者一覧表を記載してもらっていましたが、住所の記載が抜けているなど不十分なところがあったため、今日相談に来る際には、よく調べてきてほしいと半蔵弁護士から伝えていたのでした。  半蔵弁護士は、義郎さんが記載してきた債権者一覧表を受け取りました。債権者一覧表には、住宅ローン債権者として銀行が約2800万円、その他のカードローンなどの債権者として6社合計約400万円が記載されています。
半蔵弁護士

「ふむふむ。債権者総数6社で、うち1社が住宅ローンの銀行ですね。」

義郎さん

「はい、そうです。」

半蔵弁護士

債権者に漏れはないですか?たとえば、勤務先からの借入をしているということはないでしょうか?」

義郎さん

「いえ、それはありません。」

半蔵弁護士

「どなたかの保証人になっているということもないでしょうか?」

義郎さん

「それもないです。」

半蔵弁護士

「親戚や友人の方からの借入というのもないですね?」

義郎さん

「はい、ありません。」

半蔵弁護士

「闇金融といって正規の業者でないところからの借入もないでしょうか?」

義郎さん

「はい、ありません。一時はそういうところから借りようかと思ってこともありましたけど・・・」

半蔵弁護士

「いやいや、絶対にそんなところから借りてはダメですよ。今後も、ご家族のためにも、絶対に手を出さないと誓って頂けますね?」

義郎さん

「はい、分かりました」

 半蔵弁護士は、しつこく債権者の漏れがないかどうか尋ねます。これは、債権者に漏れがあった場合、債務整理の計画が狂ってしまったり、法的な手続をとった場合に不利益を受ける可能性があるからなのです。  半蔵弁護士は、住宅ローンのことについて尋ねていきました。
半蔵弁護士

「住宅ローンが付いているマンションですが、これは5年くらい前に購入したものでしたね?」

義郎さん

「はい、そうです」

半蔵弁護士

「購入価格はいくらだったのですか?」

義郎さん

「ええっと、いくらだったかな。。」

篤子

「約3500万円でした。」

篤子さんが代わって答えます。
半蔵弁護士

「30年ローンで今の残債務が約2800万円で、それほど元金も減っていないでしょうから、どなたか頭金は援助してもらったのでしょうか?」

義郎さん

「はい、私たちの貯蓄に加えて、両親から頭金を500万円ほど援助してもらいました。」

 半蔵弁護士は、島津さんが持参した不動産の現在事項証明書を確認しましたが、マンションの所有名義は島津義郎さんの単独所有になっていました。
半蔵弁護士

「マンションの名義は義郎さんの単独所有ですね。このマンションには住宅ローンの銀行以外は抵当権は付いていませんか?」

義郎さん

「はい、付いていません」

半蔵弁護士

「住宅ローンは現在、月額いくらくらい支払っていますか?」

篤子さん

「ボーナス支払いを併用してていますので、普通の月ですと大体8万5000円くらいです。ボーナス月の7月と12月は5万5000円にプラスして20万円くらいになります。」

お金の管理は篤子さんの方が詳しいようです。
半蔵弁護士

「住宅ローンは今延滞がありますか?」

義郎さん

「いえ、とにかく住宅ローンだけは遅れないようにしていましたので、今のところ延滞はありません」

半蔵弁護士

「マンションの管理費は月いくらくらいですか?」

篤子さん

「はい、大体月1万7000円くらいになります。」

半蔵弁護士

「マンションの管理費の滞納はないでしょうか?」

義郎さん

「それもありません。」

次に、半蔵弁護士は、住宅ローン以外の債務のことについて尋ねていきました。
半蔵弁護士

「住宅ローン以外の債務ですけれども、一番古くから取引しているのはどの業者でしょうか?」

義郎さん

「ええっと、一番古くというと、パシフィックコーポレーションかなあ。私が就職したことから、買い物で使っていましたから」

半蔵弁護士

「なるほじ、キャッシングをするようになったのはいつ頃からですか?」

義郎さん

「キャッシングするようになったのは比較的最近で、すべての業者がここ2〜3年のうちです。」

半蔵弁護士

「キャッシングするようになったのは、借りたお金を住宅ローンに回すようになったからですか?」

義郎さん

「そうです」

半蔵弁護士

「どうして、住宅ローンの支払いが苦しくなってしまったのでしょうか?」

義郎さん

「はい、普通の月の支払いはなんとかなるのですが、会社からのボーナスが減ってしまって、ボーナスの支払いが苦しくなってしまったのです。」

義郎さんによると、義郎さんが勤めている中堅の機械メーカーでは、3年くらい前のリーマンショックのあたりから経営が苦しくなり、従業員の給与も減額され、特にボーナスが減額されるようになったということでした。 次に、半蔵弁護士は、島津さんの資産について尋ねていくことにしました。

島津義郎さんの個人再生 その2 島津義郎さんの個人再生 その3 島津義郎さんの個人再生 その4