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離婚に伴う子どもの問題
【裁判例】 アメリカ内で婚姻生活を営み,子が出生した後離婚した日本国籍を有する申立人が,未成年者である子の監護者を申立人単独に変更することなどを求めた事案について,日本の国際裁判籍を否定した事例 東京家庭裁判所 平成20年8月7日
1 本件は,アメリカ人男性と結婚し,子どもをもうけた日本人の母親が,アメリカワシントン州の裁判所において,自ら(母親)が主たる養育者となって未成年者を米国内で養育する内容の監護計画に同意し,ワシントン州裁判所は,2008年6月,離婚命令によって監護計画を同裁判所の命令として承認し,本命令の居住規定に故意に違反した場合には,法廷侮辱罪により罰則の対象となることを警告しました。 ワシントン州裁判所による前記命令の後,母親は,8000ドルの保証金を預けて,子の旅券の交付を受け,2008年7月×日に日本に一時帰国しましたが,日本に帰国後,子と共に日本で生活することを決意し,帰国から5日後には実家を住所として住民登録し,アメリカに戻る予定であった日に戻らずに,その日に子の監護権指定等の申立てを行い,子と共に,そのまま日本国内に滞在を続けたというものです。 2 裁判所は,このような件で,日本に国際裁判管轄がないものと判断しました。 原則として,本件のような監護者の変更等申立事件の場合には,子の福祉の観点から,子の生活関係の密接な地で審判を行うのが相当であり,子の住所地又は常居所地の国に,国際裁判管轄が 認められるべきであるとし,本件での,母親と子の日本での滞在は,単なる「一時帰国」あるいは「旅行」と評価すべきであるとし,直ちに子の生活関係の密接な地が日本国ということは適当でなく,子の居 所を形式的に捉えて,その住所地又は常居所地が日本になったと評価して,我が国に国際裁判管轄を認めるのは相当でないと判断しています。。 また,本件ではワシントン種裁判所での手続きにおいて,父親も母親も手続に実質的に参加して,当事者双方が弁護士を依頼して1年4か月に及ぶ裁判手続を行い,ペアレンティング・カウンセリング,ペアレンティング・プラン・エバリュエーションを経て作成された,米国内を居住場所とする内容の監護計画に双方合意し,それを裁判所が承認して命令したものであるから,未成年者の居住場所については,必要な議論が尽くされ,決着がついたものといわなければならないとも言っています。 3 これまでの例では,日本の裁判所の国際裁判管轄自体については認めたうえで,外国裁判所の決定がある場合,その内容が日本法の観点から見て承認されるかどうかという判断枠組で判断するというのが通常でしたが,本件では,ワシントン州裁判所の決定から短期間に日本に帰国した上,日本での滞在期間も極めて短かったという特殊性があったと言われています。 我が国がハーグ条約を締結した場合には,本件のような事案では,ハーグ条約締結国であるアメリカの法令に照らして,監護権を侵害したものとして,原則として引渡命令が発令されるものて考えられます。 【掲載誌】 家庭裁判月報61巻11号65頁
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