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有責配偶者からの離婚請求 QA
【裁判例】 最高裁昭和62年9月2日の差戻審 東京高等裁判所 平成元年11月22日
最高裁判所昭和62年9月2日を受けた差戻審の判決です。以下のように述べて、最高裁が判断するように命じた「特段の事情」が存在しないとして、有責配偶者である夫から妻に対する離婚請求を認めました。なお、財産分与1000万円、慰謝料1500万円を認容しています。 昭和62年の最高裁判決を受けて,妻は、特段の事情として、次のような主張をしました。 @夫が虚言を弄して妻の名誉を毀損するなど、目的のために手段を選ばない訴訟活動を行っている A妻は離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれること、その具体的根拠として、 (イ)妻は、夫と松子の同棲生活について自分が夫の妻であるという自負で耐えてきたのに、最後の自負も奪われること (ロ)夫には強度の背信性が存することを主張する。 高裁は,@については、訴訟当事者、特に離婚訴訟の当事者は父親の行動に疑いを抱く傾向が強く、その疑いが次第に確信に高まることは避けられないものであり、夫は妻が不貞をし、多くの男性と関係したことを主張し、夫が積極的に事実をねつ造し、これに合致する証拠を作出したということは認められず、その立証も夫とその妹が記憶に基づき推測的に述べるものであり、右の訴訟活動が直ちに名誉毀損罪あるいは不法行為を構成するものとは認め難く、その訴訟活動が常軌を逸する程度に悪質であるとは認められないとしました。 また、Aの(イ)は、本件離婚請求が認容されると、妻の最後の自負も奪われるというものであるが、それは、結局、自己の意思に反して離婚が強制的に認められる精神的苦痛にほかならないものである。これは裁判離婚一般に認められる範囲のものであって、殊更これを重視するべきではなく、特段の事情には当たらない,と判断しました。 さらに、(ロ)の強度の背信性の存する理由として、夫には破綻した婚姻関係の調整ないし整理に真剣な努力の跡がうかがえず、妻は経済的に不安な状態に置かれると主張するけれども、右事情は離婚と同時又は離婚後において請求することが認められる財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるから、殊更に重視するべきではなく、それ自体直ちに特段の事情に該当するものとはいえないというべきである。 妻は、これまでの訴訟経過、特に調停・和解手続を通じて夫に本件離婚問題を誠実に解決する気持がなく、本件離婚請求が認容されたならば、これと同時に解決を予定されている財産分与又は慰藉料給付の判決が無視されることを恐れているもののようである。確かに、夫は妻に対し別居の際に文京区指ヶ谷町所在の建物を与えてはいるものの、弁論の全趣旨によれば、別居後妻に対して生活費を支弁したことがなく、自らすすんで財産的給付をしようとの態度をみせなかったことが認められるけれども、他方、妻も夫に対して別居後積極的に婚姻費用分担の請求をしなかったこともまた事実であるとしました。 最後の、夫が妻に対して生活費を支払っていなかった点について、妻が「婚姻費用分担請求をしていなかった」として、(妻が特に生活にも困らないだろう)と暗に示唆している点はやや疑問を感じますが、逆に言えば、有責配偶者からの離婚請求に備えるためには婚姻費用分担の請求をしておくべきともいえるかと思います。 本件は、本判決後さらに上告されましたが、和解金1500万円で和解されて終結したということです。 【掲載誌】 家庭裁判月報42巻3号80頁 判例時報1330号48頁
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