婚約・内縁に関するQA

【裁判例】手術による人工妊娠中絶をした女性が,男性に対し,精神的苦痛及び肉体的苦痛等による損害等の賠償を求めた事例 東京地方裁判所平成21年5月27日
1 事案の概要 (1)当事者は,結婚相談会社にそれぞれ入会し,男性側が相談所を通じて女性に会いたいと希望し,女性もこれを承諾した。 (2)平成19年2月3日に初めて会い,互いに交際することを決め,同月12日にデートをして外食した後男性宅に行った。 (3)同月16日及び同月23日の外食後には,女性が男性宅に泊まって合意の上で性行為をした。いずれの際も男性は避妊具を使用せずに膣外射精をした。 (4)3月10日に女性が男性宅の洗濯機内にあった部屋着から男性の浮気を疑い,同月12日に男性が相談所に女性との交際を終えたい旨を連絡し,遅くとも同月30日までに女性が相談所から男性との交際終了を伝えられた。 (5)5月24日に女性が病院の診察を受けて妊娠を確認し,男性にメールで妊娠を伝えた。 これを受けた男性が女性に電話をかけ,同月25日にそれぞれ送信して待ち合わせ場所等を決めた上,同日夕刻に双方が面談をした。 そして,連名の人工妊娠中絶手術の同意書を作成し,男性が女性に30万円を手渡した。 (6)5月28日及び同月29日の各午前2時過ぎころに女性がメールを送信したが,男性これらに返信しなかった。 (7)同月29日に女性が男性にあらかじめ伝えていたとおり医院に入院し,同月30日に中絶手術を受けた。 (8)9月16日に男性が同行した寺において女性が中絶した子(以下「子」という。)の納骨をした。 2 本件事案で,女性は,男性に対して,慰謝料等の請求をしました。 まず,男性は,中絶した子の父親が自分であることを否認しましたが,この点については,訴訟に至るまで子の父であることに疑念を示したことはなく,父であることを前提に同書に署名捺印し,納骨に同行していることなどからすれば,子の父親は男性であるとしました。 女性側は,望まない妊娠は女性に多大な負担を与えるから,男性はあらかじめ妊娠をしてよいかどうか確認して同意を得る必要があり,この確認をしていない場合は女性が妊娠を望んでいないことを前提に避妊をする義務があるという主張をしましたが,裁判所は,その点については男女ともにフィフティフィフティであって,避妊方法の不完全さ等を理由に男性の責任を問うことができないとしました。 しかし,共同して行った先行行為の結果,一方に心身の負担等の不利益が生ずる場合,他方は,その行為に基づく一方の不利益を軽減しあるいは解消するための行為を行うべき義務があり,その義務の不履行は不法行為法上の違法に該当するというべきであるとし,本件性行為は当事者が共同して行った行為であり,その結果である妊娠は,その後の出産又は中絶及びそれらの決断の点を含め,主として原告に精神的・身体的な苦痛や負担を与えるものであるから,被告は,これを軽減しあるいは解消するための行為を行うべき義務があったといえるが,男性は,どうしたらよいか分からず,具体的な話し合いをしようとせず,女性に決定を委ねるのみであったのであって,その義務の履行には欠けるものがあったというべきだとしました。 結論として慰謝料200万円,治療費等68万4604円,弁護士費用10万円の損害を認めましたが,ただ,賠償すべき損害の範囲は2分の1に留まるとし,受領済みの30万円を差し引いた114万2302円の賠償を命じました。 3 コメント 不注意な性行為,妊娠については,男女の自由意思に基づくものである以上,そのこと自体で責任は発生しないが,妊娠した以降,中絶するかどうかということについては男性としてもきちんと対応すべき義務があるということでしょう(本件で男性は逃げ回っているばかりの対応をしていたような認定となっています。)。 【掲載誌】判例時報2108号59頁
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