親子・親族に関する裁判例

【裁判例】 養女の婚姻に反対する養親の態度等から民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」にあたるとされた事例 東京地方裁判所 昭和54年11月30日
結婚に際して,親がその結婚に反対するというのは,当事者にとってはとてもつらいことですが,これが高じて離縁請求にまで至ったという事案です。 【事案の概要】 1 養子は昭和23年生まれの女性で,実父の実妹である養母,その夫(養父)に子がなかったことから,8才の時に養子縁組しました。   養子は,縁組以降,養父母と同居生活を始め、高校,短期大学を経て大学夜間部を卒業し,養親子関係は、昭和50年に至るまではさしたる問題はありませんでした。 2 昭和48年,養子は友人の結婚式に出席した際に高校の級友であつた男性と再会し、以後同人と交際をするようになります。   そして,昭和50年,その男性から養子に対しプロポーズがあり,養子は右結婚の申し出を承諾し,2人は、お互いの親を説得しようと話し合いました。 3 そこで,男性は、養父母のもと方を訪れ,養子との結婚の同意を求めたところ,養父は、男性の勤務先及び家族関係などを尋ねたうえ、「自分達には子供がいないので嫁にやるわけにはいかない。もし結婚したいのなら、姓を変えて名乗り,東京に住んでほしい。」と答えました。それは男性にとっては受けられない条件でした。 4 養子も結婚問題について養父母と話し合いましたが、養父母は、「20年間養子でありながら出て行くのは裏切り者である。」などと非難し結婚に同意を与えないばかりか、男性の母に対し「お宅の息子が娘を誘惑して困る、お宅の息子は財産目当てだ」など,男性と養子との結婚を妨げるような内容の電話をかけたり,手紙を出したりしました。 5 その後も養子らは依然として交際を続けていたため,養父母は非常に心配し,養子の実家を尋ね、実親に対し結婚をやめるよう説得してほしいと申し入れたりしました。   さらに,男性のの勤務先の上司を訪ねて男性に結婚をやめるよう忠告してもらうことを依頼しました。   のみならず,養父母は,男性の母宅を訪ね、男性から結婚の申し出を受け大変迷惑している旨を強く申し入れ、また,養父母の姓を名乗つてもよいという男性と無理矢理養子を見合させたりしました。 6 養子は、養父母一緒に生活することが苦痛になり,離縁することを真剣に考えるようになりました。 7 このような事情のもと,養子から養父母に対し離縁の請求がされたというものです。 【コメント】  裁判所は,次のように認めて,離縁を認めました。  子どもの結婚に親が介入してくることは,実親,養親関係なくまま見られるところですが,やりすぎると親子関係が壊れてしまうということです。   ほどほどにして,もはや大人となった当事者を信頼して任せるようにしましょう。 「養子が結婚を申し出た際に,幼少のころから20年間養子として大切に育て上げた養子が自分達の手元から離れようとすることに養父母が少なからず動揺したであろうことはそれなりに理解できないものでもない。しかしながら,養父母はさしたる高齢ではなく,養子との同居がなくてもさしあたり自分らの生活を十分維持できるにもかかわらず,若い二人の幸わせを祝福しようとする寛容さに欠け,頑くなに結婚に反対しつづけるばかりか、男性の勤務先及び養子の実家を訪れるなどしで積極的に右結婚を阻害する行動をとり続け,更に将来養子の夫となるべき男性の人格に対する侮辱的言動に出たことは,余りに頑冥かつ自己中心的態度であるといわざるを得ず,そのために,養子が養父母に対し強い不信感を持つに至つたことは首肯することができるし,養子は昭和51年5月以来約3年半にわたり養父母と別居状態にあつてもはや感情的にこじれきつており,全く親子としての接触を欠いていること,養父母は養子との縁組の継続を望んでいるものの,養子の離縁意思は強固であることね男性及びその実家は養父母に対し抜き去り難い不信感を抱いており、また養子の実家も養父母と反目を強めているなかで,養子に養父母との縁組を維持させつつ男性との結婚生活を強いることは、将来にわたり余りに多くの精神的苦痛を負わせる結果となることなど、諸般の事情を総合勘案すると、養親子間には縁組を継続し難い重大な事由が存するものというべきである。」 【掲載誌】 家庭裁判月報32巻6号67頁        判例タイムズ404号134頁
【関連QA】
連れ子のある女性と結婚し,私は連れ子と養子縁組をしました。しかし,その後,夫婦関係がうまくゆかなくなり,離婚や養子縁組の解消(離縁)の話し合いを進めています。しかし,離婚には応じてくれるようですが,離縁については「成人になるまで養育費を支払ってほしい」ということで応じてくれそうにありません。子どもは現在6歳です。女性の連れ子であって,養子なのですし,離婚した後も私が養育するというのは納得がゆきません。どのようにしたらよいのでしょうか? 【裁判例】 縁組を継続し難い重大な事由があるとされた事例 最高裁判所 昭和60年12月20日 【裁判例】 長男が自分の父の財産につき弟妹の将来の相続分・遺留分の割合を減少させるために,右父と長男の妻,その子夫婦の3名が同時に養子縁組するなどした場合に,当事者間に養子縁組をする意思がないとして縁組無効を認めた事例 東京高等裁判所 昭和57年2月22日 【法律相談QA】 法律相談の時間の目安はどのくらいですか? 法律相談を予約したい場合はどうすればよいですか? メールで相談することはできますか? 法律相談の料金はいくらですか? 費用が幾らくらいかかるのか不安です


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