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親子・親族に関する裁判例
【裁判例】 縁組を継続し難い重大な事由があるとされた事例 最高裁判所 昭和60年12月20日
家業や祭祀を継ぐための養子というのは,特に農家などでは現在でもよく行われていることですが,本件もこのような事案です。 【事案の概要】 1 養父は明治34年生まれ,養母は大正3年生まれという夫婦で,専業農家でした。 養父母には実子がなかつたころから,農業の承継と祭祀の承継を目的として、昭和50年に,養子(昭和23年生まれ)と養子縁組を行いました。 2 養子は当時会社に勤務していましたが,勤務の合間や休日を利用して農業を手伝い,農繁期には会社を休んで農作業に従事することを了承していました。 3 養子は縁組当初は努めて農業を手伝い,給料の中から生活費を養父母に渡し,養父母も養子に対して気を遣うなどして双方が養親子関係の円満な維持継続に努力していたので,その生活は平穏でした。 4 しかし,農作業が近隣農家に遅れることを嫌って,養父母が養子に対し農作業の手伝いを求めたところ養子がその勤務の都合ですぐにこれに応じられなかつたこともあり,次第に養父母の不満がつのるようになります。 そして,農作業中,粗野な言葉で養子を叱責することも重なり,これに対し養子も粗野な言葉を使つたり暴言を吐くようになりました。 5 また、養子は、昭和54年に養父母の反対を押し切って土地建物を投資の目的で購入するなどし,このことも養父母にわだかまりを残しました。 6 そして、昭和56年には、仕事のことで意見があわなかつたことから,養父からつかみかかられた養子が養父を押し倒したり,養母に対しても空の牛乳びんを投げつけたり足蹴にしたこどがあり、また、養父が養子の悪口を他人に言い触らすことを阻止するため,自転車を使用させないためにタイヤの空気を抜いたこともありました。 7 このような経緯で,養父母の側から養子に対し,離縁の調停,訴えが提起されたというものです。 【コメント】 1 原審は,養子関係の改善の余地がなかったとはいえず,また,養子に対する嫌がらせは養父母側から一方的になされていた者であって,養父母からの離縁請求は権利の濫用にであり有責当事者からの離縁請求に当たるとして,養父母からの離縁請求を認めませんでした。 2 しかし,最高裁は次のように述べて,養父母からの離縁請求を認容しました。 (1)養子が養父母に対して加えた暴行について 原審は,一時的偶発的であって,一般の親子関係においてもしばしばみられるところであると判断しました。 しかし,最高裁は,ているけれども、養子は養父母に対し粗野な言葉を使つたり、暴言さえも吐くようになつており,また,養父母の反対にもかかわらず自分の意思を通して投資の目的で不動産を購入するに至つた等の事実があり,そのために当事者間にわだかまりや感情的な対立が累積し,高まつていたものと推測される背景事情があるにもかかわらず,右暴行を単に一時的偶発的なものとみるのは、あまりにも表面的な捉え方といわざるを得ないとしました。 また,原審が右暴行をもつて「一般の親子関係においてもしばしばみられるところである」としている点については,80歳と67歳の老父母に対して、34歳にも達した子がこれを押し倒したり,空の牛乳びんを投げつけ、あるいは足蹴にする等の暴力行為に及ぶことが「一般の親子関係においてもしばしばみられるところ」とする事実認識の当否はしばらく措くとしても、養親子関係における前記のような暴行の事実を実親子間に起きた場合と同様に評価するのは相当でないのであって,このような老齢の養父母に対する暴行は養親子関係を破綻に導く行為として重視されなければならない,と判断しました。 2 養子が基本的には上告人らとの養親子関係を望み、将来の和合を望んでいること 原審は,このことを理由になお本件縁組を継続し難い事由があるとするのは相当でないとしました。 しかし,最高裁は,養子が養父母との関係改善のための何らかの真摯な努力をしたことは原審の認定しないところであるばかりでなく、かえって,養子はね養父母が申し立てた離縁調停の期日に一度も出頭しなかつたというのであって、果して被上告人が上告人らとの和合の意思を有しているかどうか疑わしいとしました。 3 これらのことから,最高裁は,本件養子縁組については、民法814条1項3号にいう「縁組を継続し難い重大な事由」があるものとしました。 【掲載誌】 家庭裁判月報38巻5号53頁 最高裁判所裁判集民事146号379頁 判例タイムズ582号65頁 金融・商事判例739号44頁 判例時報1180号57頁
【関連QA】
連れ子のある女性と結婚し,私は連れ子と養子縁組をしました。しかし,その後,夫婦関係がうまくゆかなくなり,離婚や養子縁組の解消(離縁)の話し合いを進めています。しかし,離婚には応じてくれるようですが,離縁については「成人になるまで養育費を支払ってほしい」ということで応じてくれそうにありません。子どもは現在6歳です。女性の連れ子であって,養子なのですし,離婚した後も私が養育するというのは納得がゆきません。どのようにしたらよいのでしょうか?
【裁判例】 養女の婚姻に反対する養親の態度等から民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」にあたるとされた事例 東京地方裁判所 昭和54年11月30日
【裁判例】 長男が自分の父の財産につき弟妹の将来の相続分・遺留分の割合を減少させるために,右父と長男の妻,その子夫婦の3名が同時に養子縁組するなどした場合に,当事者間に養子縁組をする意思がないとして縁組無効を認めた事例 東京高等裁判所 昭和57年2月22日
【法律相談QA】
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法律相談を予約したい場合はどうすればよいですか?
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法律相談の料金はいくらですか?
費用が幾らくらいかかるのか不安です
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