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財産分与・慰謝料に関するQA
【裁判例】 不貞行為の相手方に対する慰謝料請求が権利の濫用に当たるとして排斥された事例 最高裁判所 平成8年6月18日
配偶者と不貞行為を行った第三者について,不貞行為の時点で婚姻関係が破たんしておらず,その第三者が不貞行為の相手方に配偶者がいるとの認識を有していた場合には,当該第三者は不法行為責任(慰謝料)を負うとされています。 本件でも,この類型の問題で,妻が夫と不貞行為を行った女性に対し慰謝料請求をしましたが,100万円の慰謝料の支払を命じた原審に対し,最高裁は妻の請求は権利の濫用であるとして請求を棄却する判断をしました。 【事案の概要】 1 当該夫婦は昭和59年に婚姻した夫婦で,子供も二人いました。 2 夫Aの不貞行為の相手方となった女性Bは,スナックを営んでおり,もともとは夫がここに通っていたのですが,Aは,そのスナックの2階に住んでいたホステス(Bではない)と半同棲のような生活になっていたと いうことです。 そして,どういうわけか,Aがそのスナックに通わなくなる時期と前後して,そのスナックに妻Cも通うようになり,CはBに対し,「Aが別の女と同棲している」とか「自分の兄の結婚式が終わったら離婚する」などと愚痴をこぼすようになります。 3 その後,Aは,Bに対し,「本気に考えているのはお前だけだ。付き合ってほしい。真剣に考えている。妻も別れることを望んでいる。」などと言って,ホテルに誘うようになります。 4 Bは,Aのことを適当にあしらっていたようですが,Aから,「妻とは別れる。それはお前の責任ではない。俺たち夫婦の問題だから心配することはない。俺と一緒になってほしい。」と言われQBSUS@TO, 結局,関係を持ってしまいます。 5 そして,Aから「妻が別れることを承知した」などと言われて結婚の申し込みを受け,これを承諾し,結婚の準備を始めます。しかし,実際には,Aの言っていたことはウソで,Cとの離婚に向けた話し合いな どは全くされていませんでした。 6 そして,ついにAとBの関係がCに発覚し,CがBに対し慰謝料を請求したという経緯です。 7 その後,Bは,Aのスナックに来店し,他の客が帰って2人きりになると,Cに500万円を支払うよう要求し,Bがこれを拒否すると,胸ぐらをつかみ,両手で首を絞めつけ,腹を拳で殴ったりなどの暴行を加 えるなどしています。 また,Cも,Bのスナックに来店し,他の客の面前で「お前,男欲しかったんか。500万言うてん,まだ,持ってけえへんのか。」と言って,怒鳴ったりするなどの嫌がらせをするようになります。 【コメント】 何となく,AとCとの美人局ではないのかというような気がしないわけでもありませんが,一審判決がCからAに対する請求を棄却したのに対し高裁は100万円の慰謝料請求を認めました。 これに対し,最高裁は,高裁の判決を破棄して,Bの請求を認めませんでした。 「Aがその当時Bと将来婚姻することができるものと考えたのは,頻繁にAの経営する居酒屋に客として来るようになったCがAに対し,Bが他の女性と同棲していることなど夫婦関係についての愚痴をこぼし,Bとの夫婦仲は冷めており,離婚するつもりである旨話したことが原因を成している上,は,BとAとのを知るや,Aに対し,慰謝料として500万円を支払うよう要求し,その後は,単に口頭で支払要求をするにとどまらず,Bの暴力によるAに対する500万円の要求行為を利用し,Aの経営する居酒屋において,単独で又はBと共に嫌がらせをして500万円を要求したが,Aがその要求に応じなかったため,本件訴訟を提起したというのであり,これらの事情を総合して勘案するときは,仮にCがQに対してなにがしかの損害賠償請求権を有するとしても,これを行使することは,信義誠実の原則に反し権利の濫用として許されないものというべきである。」(要旨) 【掲載誌】 家庭裁判月報48巻12号39頁
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