1 抵当権が付いた不動産の所有権を取得した第三取得者は,抵当権者に対して抵当権の消滅請求をすることができ(民法397条),これを抵当権消滅請求といいます。
抵当権には随伴性といって,対象不動産の所有権移転に伴って抵当権も不動産に付着したまま移転するという性質がありますが,いつまでも抵当権が付いたままの不動産を所有させることは第三取得者にとって酷であることから,第三取得者が相当な対価を支払って抵当権を消滅させることを認めた制度です。
2 抵当権消滅請求の手続(民法383条)
抵当不動産の第三取得者は,抵当権消滅請求をするときは,登記をした各債権者に対し,次に掲げる書面を送付しなければならないとされています。
@取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
A 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
B 債権者が2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第1号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
3 みなし承諾(民法384条)
そして,下記の場合には,前記書面の送付を受けた債権者は,抵当不動産の第三取得者が民法383条第3号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなされてしまいます(民法384条)。
@ その債権者が民法383条各号に掲げる書面の送付を受けた後2箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
A その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
B 第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
C 第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定が確定したとき。
4 抵当権者としては望まない時期に担保物件の競売を強制されることにもなりかねないことから,慎重に対応すべきことになります。