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名誉棄損罪に関するQA
【裁判例】 私人の私行であっても「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当するとされた事例−月刊ペン事件 最高裁判所 昭和56年4月16日
巨大宗教団体の会長の女性関係について報じた雑誌記事について、一審、二審が「公共ノ利害ニ関スル事実」に該当しないとして名誉棄損罪の成立を認めて、被告人に対し懲役10月執行猶予1年間の有罪判決を宣告しましたが、最高裁は、次のように述べて、「公共ノ利害ニ関スル事実」に当たるとして、破棄差し戻しました。 「私人の私生活上の行状であつても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法二三〇条ノ二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合があると解すべきである。 本件についてこれをみると、被告人が執筆・掲載した前記の記事は、多数の信徒を擁するわが国有数の宗教団体であるb学会の教義ないしあり方を批判しその誤りを指摘するにあたり、その例証として、同会のc会長(当時)の女性関係が乱脈をきわめており、同会長と関係のあつた女性二名が同会長によつて国会に送り込まれていることなどの事実を摘示したものであることが、右記事を含む被告人の「a」誌上の論説全体の記載に照らして明白であるところ、記録によれば、同会長は、同会において、その教義を身をもつて実践すべき信仰上のほぼ絶対的な指導者であつて、公私を問わずその言動が信徒の精神生活等に重大な影響を与える立場にあつたばかりでなく、右宗教上の地位を背景とした直接・間接の政治的活動等を通じ、社会一般に対しても少なからぬ影響を及ぼしていたこと、同会長の醜聞の相手方とされる女性二名も、同会婦人部の幹部で元国会議員という有力な会員であつたことなどの事実が明らかである。 このような本件の事実関係を前提として検討すると、被告人によつて摘示されたc会長らの前記のような行状は、刑法二三〇条ノ二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたると解するのが相当であつて、これを一宗教団体内部における単なる私的な出来事であるということはできない。なお、右にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきものであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではないと解するのが相当である。」 その後、差戻後の東京地裁はやはり被告人を有罪として罰金20万円とし、高裁もこれを維持し、さらに上告されましたが、上告中に被告人が死亡したため、審理は打ち切りとなりました。
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