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窃盗罪に関するQA
窃盗(すり)の既遂については有罪となったが,未遂については無罪とされた事例 さいたま地方裁判所 平成22年7月6日
1 事案の概要 電車内の酔客から財布などをすり取る手口のスリについて,被害者Aに対する窃盗既遂は有罪としたが(もっとも,この点についても事実関係に争いがあります),被害者Bに対する窃盗未遂については,被告人を追尾していた警察官が,意図的に虚偽の供述をしている疑いが強いとして無罪とした事例です。 被告人には窃盗未遂の前科があったということです。 2 裁判所の判断 (1)窃盗既遂について 検察官は,被告人が被害者Aから直接財布を盗んだということを主張しましたが,裁判所は,これを目撃したという警察官の証言の信用性を認めませんでした。 警察官の供述内容は,「被告人が大宮駅第1ホーム2番線に停車中の京浜東北線の4号車内に座っていて,その左隣には男性が寝ていた。被告人は,上体を若干前のめりにして,左手を後ろに回し,顔を横に振って,周囲の乗客を見ているような,様子を窺っているような動作をし,その後,左肩を上下に動かし,左手を自らの左臀部付近に当てたような形にして立ち上がり,降車した。寝ていた男性の特徴は,髪は黒色で短髪,メガネを使用し,太めの30代半ば位の男性であった。」などというものでしたが,被告人が左隣の男性のズボン右後ろポケットから財布を窃取したことを現認しているものではなく,その供述に係る被告人の動作も,被告人によるスリの事実を強く疑わせるほどのものとはいえないなどとしました。 また,そもそもその動作をしていたのが被告人であるかどうかも分からないとしています。 ただ,被告人は財布を車内で拾ったと述べており,裁判所はこの時財布の占有はまだ被害者Aに存在していたからという論理で窃盗既遂により被告人を有罪としました。 (2)窃盗未遂について 窃盗未遂については,被告人が被害者のズボン右後ろポケットに手を差し入れていたのを現認していたという2人の警察官の証言の信用性が問題となりましたが,裁判所は警察官が乗車していたという車両に関する供述が客観証拠と合致していないことや供述に変遷があることなどから,意図的に虚偽の供述をしている疑いが強いとして無罪としました。
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