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窃盗罪に関するQA
【裁判例】 死者の占有 最高裁判所 昭和41年4月8日
窃盗罪には死者の占有という有名な論点があります。最初から財物を奪う目的で人を殺せば強盗殺人罪ですが、当初は財物を奪うつもりはなく、殺害した後に被害品を奪う意思を生じた場合、死亡した被害者には占有はないのだから他人の占有を侵害するという窃盗罪ではなく、既に占有を離脱した被害品を奪うという占有離脱物横領罪が成立するのではないかということです。 問題意識としては、人を殺して被害品を奪っておいておいて占有離脱物横領罪というのはおかしいのではないかという処罰感情です。 被告人は,被害者を強姦した後,犯行の発覚や執行猶予の言渡も取消されることなどを恐れて,被害者を扼殺します(この時点で,被告人には,被害者の財物を奪うという意識がありませんでした。)。 その直後,肢体を遺棄する際に,被害者が身に着けていた腕時計を奪った行為が,窃盗になるのか占有離脱物横領罪になるのかが争点になりました。 この件で最高裁は、次のように述べて、被告人に窃盗罪の成立を認めました。なお、余罪も含めて被告人に対しては死刑判決が下されています。 「披告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかつたが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのてあつて、このような場合には、被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなうものというべきである。そうすると、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきてあるから、右奪取行為は、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成するものと解するのが相当である」 【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集20巻4号207頁 最高裁判所裁判集刑事159号135頁 判例タイムズ191号145頁 判例時報447号97頁
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