窃盗罪に関するQA

【裁判例】 窃盗罪と占有離脱物横領罪1 名古屋高等裁判所 昭和52年5月10日
窃盗罪は他人が占有する財物を窃取する罪であり、占有離脱物横領罪(刑法254条)は誰の占有にも属しない財物を横領する罪であってその刑罰は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」ですので、窃盗罪とは大きな違いがあるため、犯人が取った被害品が被害者の占有にあったか否かについて争われることがあります。 下記の名古屋高裁の事案では、特に常習累犯窃盗に該当するかどうかという点について被告人に重要な利害があった事もありこの点が争われ、一審が無罪としたのに対して、被害者の占有を認めて窃盗罪により有罪としました。 【案件の概要】 1 被害者は名古屋に出張していたところ,名古屋駅構内の待合室の腰掛けに腰を掛けて少し休息していましたが,夕食のため,床の上に前記旅行鞄を置いたままその場を離れました。   その際,被告人は,被害者が腰掛けていた次の腰掛けに座って週刊誌を見ながら,時折右旅行鞄の中をのぞき見するなどした後,被害者が夕食のため待合室を出て行く少し前に同待合室を出て行きました。 2 被害者は,右待合室内が比較的閑散であったので安心して,旅行鞄を置いたまま、待合室から約203メートル離れた同駅構内の食堂へ行き夕食をすませて、午後8時50分頃右待合室へ引き返して来たところ,旅行鞄が既に誰かに持ち去られてなくなっていたということです。その間約50分でした。 3 被告人は,被害者が右待合室を出て行くとすぐに入れ替りに右待合室に引き返して来て,旅行鞄をすばやくこれを窃取しました。 【コメント】  上記事実を前提として,裁判所は,被害者が右旅行鞄の占有を放棄したものとはいえず,被害者の旅行鞄に対する占有は未だ失われておらず,被告人に窃盗罪が成立するとしました。   【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集571号        判例時報852号124頁
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