刑事訴訟手続に関するその他QA

【裁判例】被害者の証人尋問において,捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を示すことを許可した裁判所の措置に違法がないとされた事例 最高裁判所平成23年9月14日
【事案の概要】刑事訴訟手続の適法性が問題となった事案です。  被告人が夜間,電車内で女性のスカート内に手を入れ,下着をめくり上げた上で臀部を直接なで回すなどしたという強制わいせつの事案で,被告人は犯行を否認していました。 公判では,「触っている犯人の手をつかみ,被告人が犯人であると確認した。」と述べる被害者供述の信用性が中心争点となりました。 検察官は,被害者の供述調書や被害再現に関する実況見分調書(被害者が被害状況を再現した写真を添付したもの)を証拠請求したのに対し,弁護人はこれらの検察官請求書証について不同意意見を述べました。 被害者の証人尋問の際,検察官は,被害者が被害状況等を具体的に証言した後に,被害者の供述を明確化するために,裁判所の許可を受けて,証拠として採用されていない捜査段階で撮影された被害者による被害再現写真を被害者に示して尋問を行いました。 裁判所は,この写真を証人尋問調書に添付し,被害者の証言を証拠の標目に掲げて事実認定を行い,被告人を有罪としました。 【最高裁の判断】 1 検察官は,証人(被害者)から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するために証人が過去に被害状況等を再現した被害再現写真を示そうとしており,示す予定の被害再現写真の内容は既にされた供述と同趣旨のものであったと認められ,これらの事情によれば,被害再現写真を示すことは供述内容を視覚的に明確化するためであって,証人に不当な影響を与えるものであったとはいえないから,第1審裁判所が,刑訴規則199条の12を根拠に被害再現写真を示して尋問することを許可したことに違法はないとしました。 最高裁の判示によれば,証人が十分に具体的な供述をした後に,再現写真等を示すことは,許されるということになります。 2 また,証人に示した写真を刑訴規則49条に基づいて証人尋問調書に添付したことについて,この措置は,訴訟記録に添付された被害再現写真を独立した証拠として扱う趣旨のものではなく,この措置を決するに当たり,当事者の同意が必要であるとはいえないとしました。 3 さらに,本件において証人に示した被害再現写真は,独立した証拠として採用されたものではないから,証言内容を離れて写真自体から事実認定を行うことはできないが,本件証人は証人尋問中に示された被害再現写真の内容を実質的に引用しながら上記のとおり証言しているのであって,引用された限度において被害再現写真の内容は証言の一部となっていると認められるから,そのような証言全体を事実認定の用に供することができるというべきであり,このことは,被害再現写真を独立した供述証拠として取り扱うものではないから,伝聞証拠に関する刑訴法の規定を潜脱するものではないとしました。 【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集65巻6号949頁        裁判所時報1540号330頁        判例タイムズ1364号90頁        判例時報2138号142頁
【法律相談QA】
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