更新料・承諾料、権利金、敷金その他に関するQA

借家契約において更新料の支払いを約する条項が消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当するか 最高裁判所平成23年7月15日
借家契約においては、借地契約とは異なり、法定更新の場合にも更新料支払特約は有効であるとする裁判例や見解も有力であるなど、借地契約に比較すると更新料支払特約の有効性が広く認められていましたが、平成13年4月に施行された消費者契約法との関係で有効性が問われたのが本件です。 最高裁判所は、更新料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない、一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であること  や,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることなどを述べて、更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とする本件の更新料支払特約は消費者契約法には反しないと判断しました。 1年間の更新期間で賃料2か月分というのはずいぶんと高いのではないかとという思いもしますが。 【裁判所が認定した事実】 1 借家人Xは,平成15年4月1日,家主との間で,京都市内の共同住宅の一室(以下「本件建物」という。)につき,期間を同日から平成16年3月31日まで,賃料を月額3万8000円,更新料を賃料の2か月分,定額補修分担金を12万円とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,平成15年4月1日,本件建物の引渡しを受けた。  また,借家人Zは,平成15年4月1日,家主との間で,本件賃貸借契約に係る借家人Xの債務を連帯保証する旨の契約を締結した。  本件賃貸借契約及び上記の保証契約は,いずれも消費者契約法10条にいう「消費者契約」に当たる。 2 本件賃貸借契約に係る契約書(以下「本件契約書」という。)には,借家人Xは,契約締結時に,家主に対し,本件建物退去後の原状回復費用の一部として12万円の定額補修分担金を支払う旨の条項があり,また,本件賃貸借契約の更新につき,  @ 借家人Xは,期間満了の60日前までに申し出ることにより,本件賃貸借契約の更新をすることができる,    A 借家人Xは,本件賃貸借契約を更新するときは,これが法定更新であるか,合意更新であるかにかかわりなく,1年経過するごとに,家主に対し,更新料として賃料の2か月分を支払わなければなら  ない,  B 家主は,借家人Xの入居期間にかかわりなく,更新料の返還,精算等には応じない 旨の条項がある(以下,この更新料の支払を約する条項を「本件条項」という。)。 3 借家人Xは,家主との間で,平成16年から平成18年までの毎年2月ころ,3回にわたり本件賃貸借契約をそれぞれ1年間更新する旨の合意をし,その都度,家主に対し,更新料として7万6000円を支払った。 4 借家人Xが,平成18年に更新された本件賃貸借契約の期間満了後である平成19年4月1日以降も本件建物の使用を継続したことから,本件賃貸借契約は,同日更に更新されたものとみなされた。その際,借家人Xは,家主に対し,更新料7万6000円の支払をしていない。 【裁判所の判断】 1 更新料は,期間が満了し,賃貸借契約を更新する際に,賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。これがいかなる性質を有するかは,賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情,更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考量し,具体的事実関係に即して判断されるべきであるが(最高裁昭和58年(オ)第1289号同59年4月20日第二小法廷判決・民集38巻6号610頁参照),更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。 2 そこで,更新料条項が,消費者契約法10条により無効とされるか否かについて検討する。    ア 消費者契約法10条は,消費者契約の条項を無効とする要件として,当該条項が,民法等の法律の公の秩序に関しない規定,すなわち任意規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限  し,又は消費者の義務を加重するものであることを定めるところ,ここにいう任意規定には,明文の規定のみならず,一般的な法理等も含まれると解するのが相当である。そして,賃貸借契約は,賃貸人  が物件を賃借人に使用させることを約し,賃借人がこれに対して賃料を支払うことを約することによって効力を生ずる(民法601条)のであるから,更新料条項は,一般的には賃貸借契約の要素を構成  しない債務を特約により賃借人に負わせるという意味において,任意規定の適用による場合に比し,消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるというべきである。    イ また,消費者契約法10条は,消費者契約の条項を無効とする要件として,当該条項が,民法1条2項に規定する基本原則,すなわち信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるこ  とをも定めるところ,当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは,消費者契約法の趣旨,目的(同法1条参照)に照らし,当該条項の性質,契約が成立するに至  った経緯,消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである。      更新料条項についてみると,更新料が,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有することは,前記(1)に説示したとおりであり,更新   料の支払にはおよそ経済的合理性がないなどということはできない。また,一定の地域において,期間満了の際,賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であること  や,従前,裁判上の和解手続等においても,更新料条項は公序良俗に反するなどとして,これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると,更新料条項が賃  貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され,賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に,賃借人と賃貸人との間に,更新料条項に関する情報の質及び量  並びに交渉力について,看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。    そうすると,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。 3 これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件条項は本件契約書に一義的かつ明確に記載されているところ,その内容は,更新料の額を賃料の2か月分とし,本件賃貸借契約が更新される期間を1年間とするものであって,上記特段の事情が存するとはいえず,これを消費者契約法10条により無効とすることはできない。また,これまで説示したところによれば,本件条項を,借地借家法30条にいう同法第3章第1節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものということもできない。 【掲載誌】 裁判所時報1535号265頁        金融・商事判例1372号7頁
【法律相談QA】
法律相談の時間の目安はどのくらいですか? メールで相談することはできますか? 法律相談の料金はいくらですか? 費用が幾らくらいかかるのか不安です


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