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借地 正当事由に関する裁判例
【裁判例】 賃貸人の自己使用と正当事由 東京地方裁判所 昭和56年11月27日
原告である地主とその家族5名は別のマンションに居住しているが手狭となり、借地の返還を受けて、居宅を建築し居住する必要があると主張し、借地人は借地上の建物を経営する印刷会社の事務所や自らの居宅として使用する必要があると主張しました。 なお,もともと本件土地を被告に賃貸したのは,原告の前所有者であり,原告は,全所有者から本件土地の贈与を受け,賃貸人としての地位も譲り受けたという経緯です。この経緯についても一つの理由となっています。 裁判所は、次のように述べて、原告である地主にも被告である借地人にも土地の使用を必要とする事情が見当たらないとしながら,交渉に関する経緯などから,地主の異議に正当事由有りと認め、立退料なしでの借地の明渡を認めました。 1 次のような事情から,原告が本件土地を使用することを強く必要としているとは認められない。 ・原告としては子供らの受験期を控えあるいは義母と同居するため、より部屋数の多い住宅に居住するのが望ましいとはいえるものの,現在の住居で子供らの受験期が過ごせないとまでは認められないし直ちに義母との同居を迫られるといった事情も認められない。 ・本件土地の明渡を受けても、原告が本件土地の具体的な利用計画をもっている様子はうかがえない ・現在原告である地主が居住しているマンションの改築・補修工事も具体化している様子はないから、右改築・補修工事問題を生じているからといって 直ちに本件土地を使用する必要があるとは認められない。 2 他方、借地人である被告にも,本件土地を使用する必要性もないとしました。 ・被告は、印刷工場をすでに本件建物から別の建物に移転しており、また、本所の建物において居住が可能であり、現に別の場所で居住している ・被告が本件土地に住みたいとの心情を有するからといって、被告が本件土地の使用を必要とする客観的事由を直ちに肯定することはできない 3 被告は、裁判所における調停で、2回にわたり、昭和53年12月末日をもって、本件土地を明け渡す旨約束している。また、前賃貸人が被告に本件土地を貸し渡したのは、被告が前賃貸人の甥であり前賃貸人の経営する会社の従業員であったことが重要な動機になっていた。 4 そうすると,原告が本件土地を直ちに使用する必要性があるとまでぱいえないが、被告側にも本件土地の使用を継続しなければならない必要はなく、彼告が調停で昭和53年12月末日限り本件土地を明け渡す旨約束したこと及び本件土地を賃貸するに至った経緯をも総合して考慮すると、原告の異議には正当の事由がある、と認めるのが相当である。 【掲載誌】 判例時報1047号116頁
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