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相続の承認・放棄に関するQA
【裁判例】 死亡保険金で相続債務を支払ったことは民法第921条1号の「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(法定単純承認)に該当するか 福岡高等裁判所宮崎支部 平成10年12月22日
相続財産の中から相続債務の支払いを行うことは,法定単純承認に該当する可能性が高いですが,被相続人の死亡による死亡保険金を使って相続債務を支払った場合はどうでしょうか。 この点を判断したのが本裁判例ですが,結論として,該当しないとしています。 【本件の概要】 1 被相続人は,仲間の猟銃誤射により死亡したが,子どもたちが相続人となりました。 2 相続人らは,熟慮期間中に,次のような行為を行いました。 @被相続人が加入していた保険会社に対し死亡保険金200万円を請求し,これを受領した。 (なお,保険金受取人の指定はされておらず,死亡保険金は被保険者の法定相続人に支払う旨の条項があった)。 A相続人らの意向を受けて,相続人らの代理人が,熟慮期間中に,受領した保険金を,被相続人の債務の一部の支払いに充てた。 B猟銃事故共済による共済金の支払が受けられるかに問い合わせたが,請求がないと回答できない旨を受けたので,その請求を試みたところ,結局,本件の事故では,共済金の支払われないことが分 かった。 3 結局,相続人らは,熟慮期間中に本件相続放棄の申述を家庭裁判所にしましたが,家裁は,次のような理由から,相続放棄の申述を認めませんでした。 ・前記死亡保険金が被相続人の相続財産に属するものとして,相続人らがこの死亡保険金を熟慮期間中に受領した行為は,民法921条1号本文の「相続人が相続財産の一部を処分したとき」に 当たる。 ・死亡保険金を相続債務の弁済に充てたことは,一部債権者に対し相続財産をもって相続債務の偏頗弁済のおそれすらある行為をしたものである。 【コメント】 相続人らの抗告を受けた,高裁では,次のように判示して,相続人らの各行為は民法第921条1号の「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」(法定単純承認)に該当しないとしました。 1 まず,死亡保険金については,相続人らの固有の財産であり,相続財産に当たらないから,これを受領する行為は「相続人が相続財産の一部を処分したとき」に該当しない。 最高裁第3小法廷昭和40年2月2日⇒
http://www.egidaisuke.com/legal_info/cat04/q4_02.php
2 したがって,相続人らが熟慮期間中に被相続人の相続債務の一部を弁済した行為も,自らの固有財産である死亡保険金をもってしたものであるから,これが相続財産の一部を処分したことにあたらない。 3 また,相続人らが共済金の請求をした行為も,民法915条2項に定める相続財産の調査をしたに過ぎないもので,この共済金請求をもって,被相続人の相続財産の一部を処分したことにはならない。 高裁は,死亡保険金請求権に関する最高裁の立場に立って,素直に解釈しました。 【掲載誌】 家庭裁判月報51巻5号49頁
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