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相続人に関するQA
【裁判例】 自筆証書遺言の検認申立てをせず、遺言を隠匿したとして相続欠格が主張された事例 東京高等裁判所 昭和45年3月17日
自筆証書遺言を保管していたのにも拘らず、遺留分減殺請求をされることを恐れて検認申立てをしなかったことは遺言の隠匿に当たるとして相続人としての欠格を申し渡されてしまったという事例です。 「被控訴人は「遺言証」なる本件自筆遺言書の交付を受けていながら、被控訴人である亡A男の生前はもとよりその死亡後も他の相続人である控訴人等ことに亡B男及び控訴人C男から異議の出ることを恐れ、控訴人等に対しては右遺言書の存在を固く秘匿し、亡A男の死亡後相続の承認又は放棄をなすべく3か月の期間満了間際の昭和30年10月7日頃法律知識のある司法書士に本件遺書言のとおり亡A男の遺産全部を自分独りで承継取得する方法について相談した結果、控訴人等を含む他の相続人全員に相続の放棄をさせるよりほかによい方法がないとの結論に達し、時あたかも右相続放棄の申述をなすべき3か月の期間の満了間際であつたので、同日取敢えず他の相続人の名義をも冒用して東京家庭裁判所に右期間伸長の請求をし、他の相続人全員に相続放棄をさせようとしたが、亡B男等が放棄を肯んじなかつたため右の方策は不成功に終り、そのまま亡A男の遺産相続については何等の処置もなされずに打ち過ぎていたところ、亡A男の死亡後2年余を経過した昭和32年8月頃相続税の納付の件で税務署に呼出されたことが契機となつて甲野弁護士に相談し、亡A男の遺言の内容の実現を図るため東京家庭裁判所に対し遺言執行者に同弁護士を選任すること及び本件遺言書の検認を請求し、ここにはじめて控訴人等を含む他の相続人に対しても本件遺言書の存在を公表するに至つたものであつて、被控訴人は亡A男の死亡後直ちに本件遺言書を公表するときは、控訴人等他の相続人から遺留分減殺請求権の行使を受け、本件遺言書のとおり亡A男の遺産全部を自分独りで取得できなくなることを恐れ、亡A男の遺産全部を何とか独りで承継しようとして亡B男及び控訴人C男等の遺産分割請求を却け、相続税納付の必要に迫まられて本件遺言書の検認請求をなすまでこれを公表せず、本件遺言書を隠匿していたものと判断するのが相当である。 そうすると、被控訴人は本件遺言書により亡A男からその全遺産の遺贈を受けたが、相続に関する被相続人の遺言書を隠匿した者として、民法第八九一条第五号及び第九六五条の規定により、亡A男の遺産について受遺者たるの資格のみならず相続人たるの資格をも失つたものといわざるを得ない。」 検認手続というのは,遺言の有効性について判断しないため,なんとなく,形式的に軽く考えられているところもないではないのですが,きちんと手続を取らないと痛い目に合うということです。 【掲載誌】高等裁判所民事判例集23巻2号92頁 家庭裁判月報22巻10号81頁 東京高等裁判所判決時報民事21巻3号37頁 判例タイムズ248号129頁 判例時報593号43頁
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