※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
「わかりました。でも,今は元気だから,弁護士さんにいますぐ財産管理をお願いするってほどでもないと思うんだよな〜。」
「そうねえ。もう少し先になって,認知症になっちゃったときにお願いできるよ うな制度はないのかしら?」
「それでしたら,任意後見という制度があります。」
「なんですか,それは?」
「任意後見制度は元気なうちに自分が信頼できる後見人を指定しておくという制度です。」
「任意後見人ってなんですか?」
「うん,任意後見人というのは,ざっくりいうと,判断能力が衰えてしまった方の財産を管理したり契約したりする法律上の代理権が与えられたひとのことを言います。」
「でも,たとえば私が認知症になってしまっても,家内が私に代わって契約できるんじゃないんですか」
「いえいえ,家族といえども,ご本人に替わって契約はできないんです」
「できないんですか。じゃあ,そのうち自宅を売って二人で老人ホームに入ろうとも考えているんだが・・・」
「うちの自宅は土地も建物も主人の名義なんですけど,主人が認知症になっちゃったら,私が土地建物を勝手に売れないってことですか」
「そうなります」
「そりゃ,困るなあ。」
「ですから,元気なうちに,自分が認知症になったら奥さんを任意後見人に指定しておく,任意後見人として土地建物も売却したり老人ホームに入る契約をする権限を与えておくっていう仕組みが任意後見契約なんです」
「なるほど,それはいいわね。必ず,私がその任意後見人になれるのかしら」
「指定しておいた人が任意後見人になれるというのが任意後見制度のいいところなんです」
「でも,俺もお前ももう年だろう。俺が認知症になったときには,お前だって認知症になってるかもしれないだろ。」
「あら,そうね。自分だけはいつまでも元気だと勘違いしていたわ」
「任意後見人に信頼できる弁護士を指定しておけば,その弁護士が任意後見人になりますよ」
「ああ,なるほど。弁護士さんなら安心よね」
「任意後見契約は公正証書という文書でしておくことが必要になっています」
「公正証書って何ですか」
「公正証書は,わかりやすく言うと,公証人という国が任命した専門知識のある人が特別に作る公文書をいうんです。公証人が仕事をする事務所を公証役場といいます。公証役場までこられない方には,公証人が出張してくれます。」
「なるほど。大事な財産を託すんだから,きちんとした文書で決めておこうって訳ね」
「。さっきの財産管理契約でしたっけ。その財産管理契約では弁護士会が監督してくれるってことだったけど,任意後見の場合はどうなのかな。」
「任意後見の場合も家庭裁判所が任意後見監督人を選任して定期的にチェックする仕組みになっているんです。」
「でも,ちょっと待って。任意後見人は,認知症になったときに財産の管理をできるようになるのだったわよね。」
「そうですよ」
「そうすると,認知症になったかどうかっていうのは誰がどう判断するのかしら。認知症になってもいないのに,勝手に認知症扱いされたら困るわ。」
「ああ,なるほど。任意後見契約というのは,ご本人が認知症になったと判断されたときに,その診断書などをつけて家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てて,裁判所が認めたときに後見人が仕事を始める仕組みになっています」
「任意後見監督人の選任って誰が申し立てるんですか」
「任意後見人として指定されている人やご親族などです」
「逆に認知症になっているのにいつまでもその申し立てがされないということはないのかしら。認知症のままほったらかされるのはいやだわ。」
「任意後見人に指定されているひとやご親族が定期的にご本人と会って認知症になっていないかどうか,確認して,症状がでていると思えば,適切に申し立てることが必要です。そこで,元気なうちは,先ほどご紹介したホームロイヤー契約や財産管理契約をして頂ければ,定期的に弁護士とご本人とがお会いする機会を通じて適切な時期に適切な申立てがされることがより一層期待できると思いますよ」
「,なるほど,任意後見人に指定するひとには元気なうちから信頼できる人を選んでおかなくちゃいけないって訳ね。」
「任意後見人に就任した後は,財産管理はもちろんのこと,さきほどの身上監護の点についてもきちんと配慮していく義務があります。」