法人格否認の法理に関するQA

【裁判例】法人格否認の法理により実質的な支配者である個人及び同人が支配する兄弟会社に手形金支払いの請求を認めた事例 東京地方裁判所平成2年4月27日
1 事案の概要 原告はAが振り出した約束手形を所持していましたが,いずれも不渡りになってしまいました。 そこで,原告は,Aの実質的支配者である被告Y3と被告Y4(夫婦です),それにY3,Y4夫婦が実質的に支配しているY1,Y2という会社それぞれに対して法人格否認の法理(法人格の形骸化及び濫用)により手形金の支払いを請求したというものです。 Aの実質的支配者である個人(Y3,Y4)のみならず,さらにY3らが支配しているというY1,Y2という兄弟会社に対しても法人格否認の法理を用いて請求したところに特徴があります。 2 裁判所の判断 (1)まず,下記のような事実から,Aは実質上被告Y3の所有,経営する会社であったといえるとしました。 ・手形を振り出したAはY4(妻)の両親が出資した会社だが,彼らは金網の製造卸業を目的とする株式会社Nの経営を営んでおり,宝石販売等の業務についての知識,経験は全く有しておらず,新たに宝石のような仕事をする意思はなかったこと ・これに反して,被告Y3(夫)は宝石卸業を営む会社の常務取締役であったもので,同分野に精通していたところ,同社の倒産により失業し,その後しばらく被告Y4とともにその実家方でその世話になっていたこと ・Y4の両親夫婦が出資してAを設立したのは,右のような困窮状態にあった被告Y3にその知識経験を生かした仕事をさせ,同被告夫婦の生計を立てさせることにしたためで,Y4の両親夫婦自身が資本出資,経営参加をすることによって利益を図る目的はなかったこと ・Y4の両親は設立当初のAの唯一の株主かつ役員であったものの,同社の設立後も株式会社Nの業務に専念しAの経営はすベて被告Y3に任せ,利益配当や役員報酬を受け取らず(Aは遅くとも昭和58年8月1日から同60年7月31日までの二事業年度において毎期利益を上げていたが,利益分配をしないで社内に留保していた。),株主,役員とは名ばかりであったこと ・被告Y4は昭和56年9月に同社の代表取締役に就任したが,これは被告Y3の意向によるもので,同社の経営はその後も引き続き被告Y3が行い被告Y4は伝票付けや帳簿付けといった限定的かつ補助的な仕事を行っていただけであり,書類上被告Y4に支払われたことになっている給料も現実にはその手に渡っておらず,被告Y3が自由に処分していたと推認されること ・昭和57年11月ころには被告Y3の出資により1000万円の増資がされていること ・Aの事務所は設立時は被告Y4の実家にあったものの,その後Y4所有のグリーンハイツに移り,ここで事務員を使用して営業をし,昭和60年暮れに再びY4の実家に移転したが,同61年5月12日に手形不渡を出して倒産し、現在は休業状態であること (2)また,AとY1,Y2は、その実質的所有者で,かつ,経営者である被告Y3を介して互いに会社財産の混同関係があり,法定の会社意思決定手続も履践しておらず,これら会社の法人格は形骸化していて,被告Y3のわら人形にすぎないということができ,A,Y1,Y2,Y3はこれを同一視することができるとしました。 (3)さらに,被告Y3は,A,被告Y1,同Y2に処する支配力を利用して,Aの倒産の危険が出てきた昭和60年11月ころ,その責任財産の隠匿を図るため,一方でAの所有する土地及び建物を被告Y1に移転し,他方で同年12月には被告Y3夫婦名義の土地を被告Y2に移転したものと認められ,Aを支配する被告Y3は被告Y1の法人格を,被告Y3は同Y2の法人格をそれぞれ濫用したものといえるとしました。 すなわち,被告Y1と同Y2の法人格,法人格の濫用を理由としても否認され,それぞれA,被告Y3と同一視される。 (4)なお,Y4については実質的なA,Y1,Y2に対する支配が認められないとして責任が否定されています。
【関連QA】 私は,株式会社Aという会社に対し継続的に品物を販売してきましたが,最近A社からの支払が滞ってきました。話によるとA社の代表者であるBは「会社を畳もうと思っている」などと言っているようです。A社は実質的にはBが一人でやっているもので株式会社と言っても税金対策の名ばかりのものです。私は,B個人に対しては請求することは出来ないのでしょうか? 当社は,株式会社Aに対し貴金属を販売してきましたが,A社の代表者であるBは,C株式会社という別会社を設立して,A社を仕入れ,C社を販売というように使い分けるようになりました。A社の支払が滞ったり倒産した場合,当社はC社に対して請求したりすることは出来ないのでしょうか? 【法律相談QA】 法律相談の時間の目安はどのくらいですか? メールで相談することはできますか? 法律相談の料金はいくらですか? 費用が幾らくらいかかるのか不安です


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