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競業避止義務に関するQA
【裁判例】製パン会社の代表取締役が,同業の別会社を設立して会社の人員を送り技術を教えるなどした行為が,取締役としての競業避止義務に違反するとされた事例 東京地方裁判所昭和59年3月26日
1 事案の概要 (1)パン業界のトップメーカー山崎製パン(原告)において,設立以来28年間代表取締役の地位にあった創業者(被告)の責任を追及した事件です。 被告は原告を創業した創業者で,その卓抜な経営拡大方針により,パン業界を代表する企業にまでになりましたが,被告は昭和23年の創設以来昭和51年まで代表取締役の地位にあって,その間,人事や日常業務全般にわたり徹底したワンマン体制を敷き,原告の業務はすべて自らの意思で決定するというものでした。 ほとんど取締役会は開催されず,批判する者は罵倒され,時には膀胱も加えられることもあったと認定されており,今でいうところのブラック会社の状態だったというところでしょうか。 (2)原告会社は昭和38年と昭和41年に,千葉県下および関西地区に営業エリアを拡大進出するにあたり,千葉工場・大阪工場として,別法人を買収あるいは設立しました。 その際,被告はこれら両会社の大部分の株式を原告会社のものとせずに被告およびその妻子等の保有するところとし,資本関係において,原告会社の一部門あるいは子会社といえない状態のままでこれら別会社を原告会社と同様支配し(千葉工場では株式取得代金を原告会社から調達し意のままになる人物を代表取締役にすえ,大阪工場の資本金は自らが調達して代表取締役となっていました),原告会社の信用・従業員・ノウハウ等を使用して営業を行いました。 被告にして見れは,創業した原告会社のグループ会社でありすべて自分の会社という程度の認識であったのでしょう。 (3)その後,原告会社内での役員間の経営支配権の争いが起こり,原告会社の支配権を取った経営陣が,被告の右行為は、取締役の善管注意義務,忠実義務,競業避止義務に違反するなどとして損害賠償などを求めました。 2 裁判所の判断 別法人(A社)を買収して取得した千葉工場について,被告自身はA社の取締役とはならなかったものの,買収資金のほとんどを原告会社に拠出させ,別法人B社大阪工場については被告自ら資金を出して代表取締役に就任するなどしており,また,料別法人の金融機関からの借入について原告会社に連帯保証をさせたり従業員の多くを原告会社からの出向で賄うなど,善管注意義務,忠実義務,競業避止義務に違反するとされました。 なお,大阪工場については,原告会社はこの地域にはいまだ現実に営業を営んでいませんでしたが,本判決は,原告会社が将来この地域に営業を拡大しようとしていた経緯から,被告が原告会社と資本関係にない会社を設立し,原告会社の同地域への進出する機会を奪ったのは,競業行為禁止の対象となると判断しています。 3 ワンマン体制の会社は世の中に無数と有り,現在においても,このようなことは起こり得るものだと思います。 会社と代表者個人の立場は分けた上で,きちんと判断していくことが必要でしょう。 【掲載誌】 判例タイムズ441号73頁 判例時報1015号27頁
【関連QA】
会社の設立時に出資してくれた知人と関係が悪化してしまい,知人の代理人弁護士から知人が保有している当社の譲渡制限付株式について譲渡の承認を求めろる旨の内容証明が届きました。今後,どのように対応すればよいのでしょうか?
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