破産に関する裁判例

【裁判例】 弁護士の債務整理開始通知と支払停止2 東京地方裁判所 平成22年4月27日
本件は、弁護士による債務整理開始通知は支払停止に該当せず、債権者としては債務者側の支払不能を認識する機会があったといえないので,債権者が行った給与控除の方法による貸金の返済受領に対し,破産管財人は否認権を行使することができないとした事例です。 裁判所は次のように述べています。 1 支払の停止」(破産法162条1項1号イ)とは,弁済能力の欠乏のために弁済期が到来した債務を一般的かつ継続的に弁済することができない旨を外部に表示する債務者の行為をいうと解される。弁済の能力には,信用を含むと解されるから,債務者が,ある時点において,現有する財産及び労務によって,弁済期が到来した債務の弁済を一般的・継続的に行い得ない状況にあっても,その後の再建計画の交渉が成立し,債務者が支払能力を回復した場合には,信用を含めた弁済能力からすると,債務の弁済が一般的・継続的に行い得ない状況にはなっていなかったと評価できる。また,債務者が,弁済期未到来の債務の将来における不履行を見越して,再建計画の交渉を行うに至った場合,仮にその交渉が不成立に終わっても,債務者の信用を含めた弁済能力との比較で,それら債務が一般的かつ継続的に弁済不能になるとの予測が最終的に成立し得るのはその時点以降と考えられる。すると,上記のような債務者の信用の利用による支払能力の回復の余地がないことが現れていると評価できる表示がされていない限り,「支払の停止」には当たらないと解される。 2 本件通知は,その記載上,債務整理の手段を特定していない。また,債務額が,破産者において対処不能なことが原告らにとって一見して明らかなほどの金額に達していると判断可能な記載も,その他,破産者の信用の利用によりその支払能力の回復の余地がないと判断できる記載もないから,本件通知をもって「支払の停止」があったとは評価できない。   また,本件の給与控除中止要請も,その際に破産申立て予定である旨の表示がされていれば別段,それ自体としては,「支払の停止」と評価できる表示がない。 本件では、弁護士の債務整理開始通知に破産方針を明記していなければ支払停止とは評価できないとし、さらに、弁護士が債権者に対して破産方針を伝えたかどうかについても検討したうえでこれを否定し、結果として破産管財人による否認の請求を退けています。 最初の債務整理開始通知に整理の方針まで記載するかどうかはともかく、破産方針と決まったのであれば早く債権者に通知しておくべきですね。


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