破産に関する裁判例

【裁判例】 支払停止又は破産申立前にされた取立委任に基づき、支払停止を知った後に取得した債務による相殺が有効とされた事例 最高裁判所 昭和63年10月18日
裁判所が認定した事実は以下のとおりです。 1破産者は、自動車部品の販売業を営み、A信用金庫との間で、昭和52年1月27日、信用金庫取引約定書(以下「約定書」という。)を差し入れて信用金庫取引約定(以下「本件取引約定」という。)を締結し、破産者の取引先から売掛代金の支払のため取得したすべての手形につき、A信用金庫に取立を委任して譲渡裏書のうえ交付し、資金繰りのため必要となる都度、右手形の割引を受けるなどの取引を行ってきた。 2 約定書四条には、「担保」との標題のもとに、次のような記載がされていた   (1)貴金庫に現在差し入れている担保および将来差し入れる担保は、すべてその担保する債務のほか、現在及び将来負担するいっさいの債務を共通に担保するものとします。   (2)債権保全のため必要と認められるときは、請求によって直ちに貴金庫の承認する担保もしくは増担保を差入れ、又は保証人をたてもしくはこれを追加します。   (3)担保は、かならずしも法定の手続によらず一般に適当と認められる方法、時期、価格等により貴金庫において取立または処分のうえ、その取得金から諸費用を差引いた残額を法定の順序にかかわらず債務の弁済に充当されても異議なく、なお残債務がある場合には直ちに弁済します。   (4)貴金庫に対する債務を履行しなかった場合には、貴金庫の占有している私の動産、手形、その他の有価証券は、貴金庫において取立または処分することができるものとし、この場合もすべて前項に準じて取扱われることに同意します。 3破産者は、本件取引約定に基づき、破産者の支払の停止及び同人に対する破産の申立の前である昭和55年1月26日A信用金庫に対し、甲手形につき取立を委任して譲渡裏書のうえ交付し、A信用金庫は、右支払の停止及び破産の申立ののち破産宣告(現在の破産手続き開始決定)がされるまでの間に甲手形を取り立て、破産者に対して取立金合計510万0800円の引渡債務を負担するに至った  最高裁判所は次の通り、述べて、A信用金庫が供した510万0800円についての相殺を有効としました。 「破産債権者が、支払の停止及び破産の申立のあることを知る前に、破産者との間で、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者が占有する破産者の手形等を取り立て又は処分してその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結したうえ、破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止又は破産の申立のあることを知ったのち破産宣告前に右手形を取り立てた場合には、破産債権者が破産者に対して負担した取立金引渡債務は、法一〇四条二号但書にいう「前ニ生ジタル原因」に基づき負担したものに当ると解するのが相当である。けだし、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合には、対立する両債権は相殺できることにより互いに担保的機能をもち、当事者双方はこれを信頼して取引関係を持続するのであるが、その一方が破産宣告を受けた場合にも無制限に相殺を認めるときは、債権者間の公平・平等な満足を目的とする破産制度の趣旨が没却されることになるので、同号は、本文において破産債権者が支払の停止又は破産の申立のあることを知って破産者に対して債務を負担した場合に相殺を禁止するとともに、但書において相殺の担保的機能を期待して行われる取引の安全を保護する必要がある場合に相殺を禁止しないこととしているものと解されるところ(最高裁昭和五七年(オ)第二四六号同六一年四月八日第三小法廷判決・民集四〇巻三号五四一頁参照)、破産債権者が前記のような取引約定のもとに破産者から個々の手形につき取立を委任されて裏書交付を受けた場合には、破産債権者が右手形の取立により破産者に対して負担する取立金引渡債務を受働債権として相殺に供することができるという破産債権者の期待は、同号但書の前記の趣旨に照らして保護に値するものというべきだからである。」
【法律相談QA】 法律相談の時間の目安はどのくらいですか? メールで相談することはできますか? 法律相談の料金はいくらですか? 費用が幾らくらいかかるのか不安です


タイトル
メールアドレス
お名前 (全角)
お問い合わせ内容
個人情報規約 個人情報規約はこちら
(注)このフォームは簡易お問い合せフォームです。一般的,簡単なご相談であればメールでご回答差し上げます(無料)。 「相談フォーム」もご利用ください。