遺言に関する裁判例

【裁判例】 公正証書遺言が遺言者の意思能力の欠如を理由に無効であるとされた事例 名古屋高等裁判所 平成5年6月29日
遺言能力を欠くとして,公正証書遺言が無効とされた事例です。 事案の概要(裁判所の判断) 1 78歳であった老人Aが遠縁の者Yに不動産多数を含む全財産を包括遺贈する旨の公正証書遺言をした際、意思能力を有していたか否かが争われた事案 2 老人痴呆の重症度を軽度,中等度,高度,最高度の4段階に分類し, (1)通常の家庭内での行動はほぼ自立でき日常生活上の助言や介助の必要は軽度で日常会話・意思疎通はほぼ普通だが,同じことを繰り返して話したり尋ね,他に興味や関心が乏しく,能力低下が目立つものを軽度 (2)知能低下のため日常生活が一人ではおぼつかなく,助言や介助が必要で,簡単な日常会話はどうやら可能だが,意思疎通は不十分で時間がかかり,金銭管理,服薬等に他人の援助が必要なものを中等度 (3)日常生活が一人では無理で,その多くに助言や介助が必要であり,逸脱行為が多く目が離せない。また簡単な日常会話すらおぼつかなく,意思疎通が乏しく困難で,さっき言ったことすら忘れるものを高度 (4)自分の名前や出生地すら忘れる,身近な家族と他人の区別もつかないものを最高度としている(東京都老人総合研究所による異常な知能衰退の臨床的判定基準) 3 そこで,たちばな園(特養ホーム)入所前後の遺言者の異常な言動及び遺言時の状況等を右判定基準に照らして検討すると,遺言者は,生前専門医の診断を受けていなかったが,本件遺言当時は正常な判断力・理解力・表現力を欠き,老人特有の中等度ないし高度の痴呆状態にあったものと推認される 4 遺言者には記銘・記憶力の障害があり,簡単な日常広話は一応可能てあっても,表面的な受け答えの域を出ないものであり,南園長か本件遺言日作成の翌日,遺言者に対して昨日の出来事を尋ねても,本件遺言をしたことを思い出せない状況であった たちばな園入所に際し,係長が出発を促しても反応がなくうつろな状態であった。 遺言者はYとこれまでほとんど深い付き合いがなかったので,本件不動産35筆を含む全財産をYに包括遺贈する動機に乏しい 全財産を遺贈し,遺言者姉弟の扶養看護から葬儀まで任せることは重大な行為であるのに,姉には何らの相談をしていないのみならず,Yから話が出てわずか5日の間に慌しく改印届をしてまて本件遺言日を作成する差迫った事情は全くなかったこと等を総合して考えると,遺言者は,本件遺言当時,遺言行為の重大な結果を弁識するに足るだけの精神能力を有しておらず,意思能力を欠いていたものと認めるのが相当であり,本件遺言は無効というべきである。 【掲載誌】  判例タイムズ840号186頁 判例時報1473号62頁
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