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遺言に関する裁判例

【裁判例】公正証書作成当時,遺言者に行為の結果を弁識・判断するに足る精神的能力が欠如していたとして,公正証書による遺言を無効とした事例 大阪地方裁判所 昭和61年4月24日
遺言能力を欠くとして,公正証書遺言が無効とされた事例です。 1 事案の概要 (1)原告と被告らの母A(当時81才)は,昭和56年7月10日死亡したが,その前日の同月9日に公正証書による遺言がなされた。 (2)Aは,昭和56年6月13日ころ,入院中の病院で弁護士Bに対し,前に作成した公正証書遺言の書き替えを依頼し,弁護士は,数回病院でAの意向を確認しながら遺言原稿を作成した。 同年7月初めころ,これをAに病室で読み聞かせ,Aからそのとおりの公正証書遺言作成嘱託手続をとるよう依頼された。 (3)本件公正証書は,同月9日午後1時30分ころからAの病室において証人の弁護士2名ら立会いのもとに作成が開始された。 当時Aはべツドに寝て右腕に点滴(輸血)中であつたが,その状態のまま,先ずBが本件公正証書遺言と同一文言の遺言原稿に基づき,これに記載された条項を順次読み聞かせるとともに,「この土地は生駒のどの部分の土地で,これを誰にあげるということですよ」という仕方で趣旨を説明し,その都度それでよいかをAに尋ねていき,Aはこれに対しうなづいたり「はい」とか「そうです」と簡単な返事をするという状態であった。 遺言原稿の全条項についてBによるAの意思確認が終つた後,続いて公証人が準備していた清書ずみの本件公正証書記載文言をAの意思を確認しながら読み聞かせていったが,その途中Aが眠りかけたりし出したため,公証人は読み聞かせを数分間中断したことがあつた。 公証人の読み聞かせに対してもAは,前記Bに対するのと同様,その内容を承認するような簡単な動作と返事をしただけであった。 この間,Aが自ら遺言内容を述べたり,B及び公証人の準備した遺言内容につき質問しあるいはその訂正を求めたりするようなことはなかった。 公証人は読み聞かせを終了後Aに本件公正証書に署名を求めたが,Aが点滴中のうえその表情や態度から署名するのは無理と判断してAの署名を代書し,Aにその実印を手渡して押印を求めた。 Aはこれを受取り公証人が下敷で支える本件公正証書の右署名下に押印したが,その力が弱かつたため印影がずれるとともに不鮮明となつたので,公証人はAに再度押印を求め,Aの手を持つて介添えしAに押印させた。 公証人は,本件公正証書に「遺言者は点滴中のため署名できないので当公証人代書したところ押印した」と付記し,立会証人の署名押印を得て,同日午後3時前ころ本件公正証書の作成を終了した。 2 裁判所の判断 肝不全による死期を目前にした段階においては,一般的にも意識障害の程度が相当進み,正常な理解,判断力を失つていると思われ,特にAの場合は,貧血が著しく,人からの問いかけに対して「はいはい」とうなずいたりして応答することはできたにしても,脳虚血のためいわゆるぼうっとした状態にあったといえるし,公証人の読み聞かせ中眼りかけたのは一時的に意識不明の状態に陥つたもので,これらを考えると本件公正証書作成当時Aが本件遺言内容を理解しうる意識状態にあつたとは考え難く,また,仮に当時Aにこれを理解できる程の意識が存した時があつたとしても,これが本件公正証書作成に要した1時間ないし1時間30分もの間持続できたとは思われない(医師の証言) Aは特に本件公正証書作成の2日前である7月7日以降前記分類の昏睡三位と四の間を行き来する状態で推移し,本件公正証書作成の翌日の同月10日には昏睡度五の状態に陥り,死亡するに至った。 本件公正証書作成当時公証人やBの問いかけにうなずきあるいは簡単な返事で応答したにしても,その意識状態はかなり低下し,思考力や判断力を著しく障害された状態にあったものと認められる。 このような意識状態に,本件遺言の内容がかなり詳細で多岐にわたる(特に,株式について遺言内容の配分を算出する計算関係は複雑である)ことを合わせ考えれば,本件公正証書遺言の内容はAが予め確定していたものである点を考慮しても,本件公正証書作成当時においては,Aがその意味・内容を理解・判断するに足るだけの意識状態を有していたとは到底考え難い(仮にAが西村の読み聞かせ開始時に右理解・判断力を備える意識状態にあつたとしても,このような意識状態が本件公正証書作成手続中その終了時まで持続して存在したということはなおさら考え難い)。 以上のところからすれば,本件公正証書作成当時Aには有効に遺言をなしうるために必要な行為の結果を弁識・判断するに足るだけの精神能力が欠如していたものというほかなく,したがって本件公正証書遺言は無効というべきである。 【掲載誌】  判例タイムズ645号221頁 判例時報1250号81頁
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