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遺言に関する裁判例

【裁判例】入院中の病院内において行った94歳の遺言者の遺言能力 東京地方裁判所 平成9年9月25日
 裁判所が認定した事実経過は次のとおりです。一時は危篤にまで陥ったようですが、その後回復を見せたようです。1月10日に遺言を作成し、同じ年の12月16日に亡くなったということです。 【事案の概要】 1 遺言者は,明治33年生で,遺言当時94歳でした。      2 遺言した前年である平成6年当時の遺言者の状況は,脳梗塞等に起因する老人性痴呆に基づく症状がみられたが、日中の生活には大きな支障はなかったとされています。。   ただ,夜間の失禁や近隣を巻き込む騒ぎを起こしても忘れているという状態ではあったようです。   平成6年に行われた検査では脳の萎縮と脳室拡大がみられたものの、加齢の域をさほど超えるものではなかったとされています。 3 被告は複数いますが,そのうちの一人が,遺言者を訪ね、遺言書作成を勧め、同人の希望を尋ねたところ,遺言者は次のような希望を述べました。    (1)被告Aには遺産の半分を相続させたいこと    (2)前記不動産の二分の一の共有分は被告Bに相続させたいこと    (3)被告C及び原告X1、原告X2に対しては相続させなくてよいこと    (4)家の祭祀は被告Aに承継させたいこと    4 その後,遺言者は平成6年10月に,骨折によりに入院して治療を受けるようになったが、入院中、独り言や暴言等不穏な言動がみられたようです。   平成6年12月に遺言者が遺言書の作成を望んでいる旨の連絡を受けた被告の一人が、平成7年1月6日、遺言者の病室に同人を訪ねると、遺言者の症状は落ち付いており、遺言の作成を希望し たということです。   そこで,原告らの遺留分に配慮して遺言書案を説明したところ、遺言者は、その内容をもって公正証書遺言を作成することを了承します。   そこで、公証人及び他の被告らと連絡を取り、同月11日に右遺言を作成することにします。 5 ところが、遺言者は、1月8日から高熱が続き、翌9日午後8時頃から、血圧が著しく低下して意識がなくなり、下血等もみられ、意識レベルV(昏睡)の状態となり,危篤状態にあるとして家族の呼び寄 せが行われました。 6 しかし、遺言者は、9日(遺言作成の前日)午後10時頃から、血圧が安定し、意識レべルTの状態(刺激しないでも覚醒している状態)にまで回復し、家族の呼び掛けに対しても返答するようになり ました。そして、遺言者は、翌10日午前中には酸素マスクの着用や検温を嫌がってこれを拒絶する行動を示したり、看護婦らの問い掛けに対して、「はい」、「大丈夫です」と返答したり、「おはよう」と話し たりするようになるまで回復します。 7 医師から、「遺言書を作成するならば早い方が良い」との話もあり、医師の都合の良い10日午後に、予定を早めて、遺言書を作成することにします。   同日午後2時頃、公証人らは遺言者の病室に入り、酸素マスクを外した同人に対し、公正証書遺言の作成に当たる人ということで公証人を紹介したところ、遺言者は、これに頷きました。   次いで、医師が遺言者に声を掛けたところ、返答があり、医師は、意識レベルTの状態にあるが、当日朝から意識状態は良く、遺言者は遺言書を作成したいとする意思があり、これに耐え得ると判断し ます。医師は、「1月10日午後2時30分の時点で遺言する時点において意思能力が十分にあったと判断します」とする診断書を作成しています。 8 医師の退室後,公証人は、被告らが立ち会う中で、遺言者に対し、氏名を尋ねると、同人から、「遺言者」との返答がありました。年齢を尋ねると、「94歳」との返答がありました。   公証人は,遺言者に対し,遺言書の内容を読み上げるのでそれで良いかどうか答えて欲しい旨を告げ,予め作成した本件遺言の内容を、順次読み上げて行くと、遺言者は、その都度、その内容どおり に相続させることで良い旨を口頭で返答しました。 12 遺言者は、本件遺言に署名押印することができない旨を述べたため、公証人がこれを代行し、被告らが証人として遺言内容を確認してそれぞれ署名押印し、最後に公証人が署名押印するなどして 本件遺言の作成を終え,その間,遺言作成の手続には約25ないし30分を要しました。 13 その後,遺言者は同じ年の12月16日に死亡しました。 【コメント】 このような事案で、裁判所は次のように述べて、本件遺言者の遺言能力を肯定しました。遺言者の身体等の状態の他、遺言の内容の複雑さの程度についても言及しています。なお,本件は控訴されましたが控訴審でも遺言能力は認められています。 「遺言者は、平成7年1月9日夜に危篤状態に陥るまでは、老人性痴呆の症状がみられたものの、その程度は夜間を除いて必ずしも重篤なものではなく、同日夜にいったんショック状態に陥り、意識レベルが大きく低下したものの、病院側の治療により、翌10日朝には意識障害が相当程度改善し、周囲の問い掛けに対して発語して返答できるようになるまで回復した事、そして、同日午後2時における本件遺言作成の際の遺言者の容体と医師の診断内容、公証人と遺言者間のやり取りの内容のほか、本件遺言の内容が、概ね、事前に被告Fと打ち合せ済みのものであった上、条項自体は全8条にすぎず、不動産の数も2つ、預金の配分先も合計5名という程度のものであったこと、さらにその後の遺言の治療経過等からすれば、遺言は、本件遺言当時、本件遺言を行う意思能力を有していたものと認めるのが相当である」 【掲載誌】  判例タイムズ967号209頁
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