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遺言に関する裁判例h3>
【裁判例】 秘密証書遺言 民法970条1項3号の「筆者」は誰をいうか 最高裁判所 平成14年9月24日
秘密証書遺言においては、要件として、「遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること」を求められています。 本件では、遺言の内容がワープロで記載されていましたが、ワープロを打ったのが遺言者ではなく、別の第三者でした。そして、遺言者が公証人らに対して遺言を入れた封書を提出した際、その第三者の氏名住所を述べなかったため、法律上の要件を欠くのではないかが問題されましたが、最高裁は、次のように述べて、本件秘密証書遺言を無効としました。 ワープロで記載された遺言は自筆証書遺言としても無効であるため、本件では、遺産のすべてを妻に遺贈しようとした遺言者の意思は果たされませんでした。 「原審の適法に確定した事実関係は,次のとおりである。 遺言者は,財産全部を妻に相続させる旨の本件遺言をした。本件遺言書の記載は,表題,本文,作成年月日並びに遺言者である遺言者の住所及び氏名から成るところ,そのうち,作成年月日である「平成10年11月15日」の記載のうちの「15」の部分及び氏名は遺言者が自筆で記載したが,その余の部分はワープロで印字されている。この印字部分は,妻の子であるAの妻Bが,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,その文例にある遺言者と妻の氏名を遺言者及び妻に置き換え,そのほかは文例のまま入力し,印字したものである。遺言者は,本件遺言を秘密証書の方式によってすることとし,横浜地方法務局所属公証人及び証人2人の前に本件遺言書を入れた封書を提出し,自己の遺言書である旨及び遺言者自身がこれを筆記した旨述べたが,遺言書の筆者としてFの氏名及び住所を述べなかった。 上記事実関係の下においては,本件遺言の内容を筆記した筆者は,ワープロを操作して本件遺言書の表題及び本文を入力し印字したBであるというべきである。遺言者は,公証人に対し,本件遺言書の筆者としてBの氏名及び住所を申述しなかったのであるから,本件遺言は,民法970条1項3号所定の方式を欠き,無効である。」 【掲載誌】 家庭裁判月報55巻3号72頁 最高裁判所裁判集民事207号269頁 裁判所時報1324号320頁 判例タイムズ1107号192頁 金融・商事判例1158号3頁 判例時報1800号31頁 金融法務事情1662号65頁
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